10.善い妻

エピソード文字数 827文字

善い妻を、誰が見つけることができようか。

彼女の値打ちは珊瑚よりもはるかに尊い。

『箴言』のラストは「善い妻」で締めくくられる。

当時の女性がいかにあるべきかという価値観がよく見える。

古代イスラエルでは確か、交渉事のうまい女がええ言うてへんかったか?

ダビデの腹心ヨアブが反乱者シェバを追い詰めた時とか。

町の代表で名も知らぬ女がヨアブと交渉しとったわ。

ダビデの第三夫人アビゲイル、過去には女預言者デボラなど。

女はただのわき役ではなく、積極的に交渉を行う場面が見えますわね。

彼女は羊の毛や亜麻を手に入れ、喜んでその手で仕上げる。

彼女は商人の船のように、遠方から食料を運んでくる。

女性の役割は幅広い。

材料を仕入れて加工する職人であり、それを売りさばく商人でもある。

そしてその稼ぎで家族を養いものする。

金稼ぐだけやのうて、飯も用意してくれるんか。

ありがたい話やで。

彼女はよく考えたうえで、畑を手に入れ、

自分で稼いで、ぶどう畑を作る。

職人であり商人であり、さらに農民でもある。

働きすぎではありませんこと?

そのともしびは夜になっても消えない。

彼女は糸巻き棒に手を置き、指で糸車を操る。

さらに夜は夜とて働き続ける。

まったく休む暇が無い。

彼女は力と気品を身につけ、明日のことを考えて、微笑んでいる。

彼女は知恵深く口を開き、その唇には情け深い教えがある。

働き者であるだけやのうて、なんやら理知的なところも求められたんやな。

ずいぶん要求高いけど、大丈夫か?

そのような女を妻にする夫は高い身分でなければね。

『箴言』の中で、夫は村の政治に携わる人物だと示唆されている。

麗しさは偽り、美しさはむなしい。
女を評価する時、外面的なことに惑わされてはいけない。

それは一時のものに過ぎないのだから。

彼女が自分の手で得た成果を、彼女に与えよ。

彼女の業(わざ)を町の門で、ほめたたえよ。

嫁さんはきちんと褒めたらなあかん。

大事にせんと神様に怒られるで。

互いに認め、称え合う。

男と女は、そうでなくては。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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