9.ソロモンの第二の箴言②

文字数 875文字

愚か者には、その愚かな言葉で答えるな。

さもないとお前も彼と同じになる。

愚か者には、その愚かさに従って答えよ。

さもないと、彼は自分を賢い者と思うだろう。

答えるな言うた後に、答えろって矛盾してへん?
さらっと読むとそんな気がしちゃうよね。

内容を少し丁寧に読んでみようか。

まず最初の二行は、相手と同じレベルに下がるなという意味だ。

愚かな言葉に愚かな言葉で言い返すことは、それ自体愚かなことなのさ。

幼い子供に馬鹿と罵られたとして、同じように馬鹿と言い返すのは馬鹿。

自らが子供であると示す必要もございません。

そして次の二行では、愚か者を野放しにしてはいけないと言っている。

同じレベルで言い返すのではなく、適切な反論を行えってことだね。

それも幼い子供に分かるよう、伝えなければなりません。

伝わらぬ言葉に何の意味もありませんことよ。

なるほどなあ。

遠まわしに「冷静になれよ」言うてるんかもしれんな。

自分を賢いと思っている人を、お前は見たことがあるか。

そのような人よりは、愚か者のほうが、まだ望みがある。

自分はかしこないから賢い、みたいなこと言うてる人おらんかった?
有名な「無知の知」ですわね。

己の無知を知る者こそが賢いと言えるものです。

プラトンが著した『ソクラテスの弁明』において、ソクラテスは神託を授かる。

それは「ソクラテス以上の賢者は一人もない」というものだった。

ピュティアの巫女の言葉にソクラテスは驚き、自問自答する。

ソクラテスと言えば、世の「知者」とされる人々に議論をふっかける嫌な奴だ。

自身は真理を知らぬと言いつつ、「知者」は真理を知らぬことすら知らぬと喝破する。

その知らぬことを知っているというただ一点において自分は賢者だと言うわけだ。

考えすぎちゃう?
穴を掘る者は自分がその穴に落ち、

石を転がす者は、自分の上に、それが転がってくる。

「自分の墓穴を掘る」っちゅうやつやな。
「人を呪わば穴二つ」……は、少し異なるかしら。
孟子の言う「爾(なんじ)に出ずるものは爾(なんじ)に反(かえ)る」ってとこかな。

こっちは善悪に関わらずだけれど、因果応報を意味する言葉だよ。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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