7.エレミヤ畑を買う

文字数 959文字

主なる神よ、町がカルデア人の手に渡されようとしているのに、

今、あなたはわたしに仰せになります、

『銀で畑を買い取り、証人を立てよ』と。

言葉の通りだ。

ユダ王国はもはや滅亡寸前。

それが理由で神はエレミヤに妻帯を禁じたよね。

せやのに今度は畑の土地を買え言うとる。

そんなん買うてもすぐに没収されて終いやろ。

妻を娶らせずにエレミヤから生活の喜びを奪った。

さらには手元に残らぬ土地を買わせて大損をさせる。

神というのはまことに、草どもを苦しめるのに長けたお方。

実はもっとひどい。

彼が買わされたのはアナトトという土地だ。

エルサレムの北およそ4.8キロメートルのところにある。

そこはすでにバビロニアの支配下に置かれていたのさ。

なんやそれ。

そんなん、ほとんど詐欺やないか。

神は神でも疫病神かしら。
ストップ。

それ以上はいけない。

確かに土地はバビロニアのカルデア人たちによって支配された。

しかし神は次のように答えるのさ。

わたしは大いなる災いをこの民にもたらしたが、

同様に、約束したあらゆる恵みを彼らにもたらす。

『人も獣も消え失せるほど荒廃し、カルデア人の支配下に置かれた』

とお前たちが言っているこの国で、再び畑が買われる。

人々は、ベニヤミンの地、エルサレム周辺の地、ユダの町々、

山地の町々、シェフェラの町々、ネゲブの町々で、畑を銀で買い取り、

証書に署名して封印し、証人を立てる。

わたしは彼らの繁栄を回復させる。

なるほど。

おそらくですが、敵の手に渡った土地は売り物にもならないでしょう。

エレミヤは破格の価格で土地を買えたのではないかしら?

例えば『創世記』には妻サラを葬る土地をアブラハムが買う場面がある。

そこでアブラハムが払った金額は400シェケルだ。

広さは分からないけれど「畑の代金」と言っている。

それに比べてエレミヤが畑を買うのに払った額はたったの17シェケル。

土地の用途を考えれば、とんでもない安さだと言えるね。

1シェケルはだいたい11グラムの銀貨。

日本の500円玉は7グラムです。

つまり17シェケルとは、せいぜい500円玉27枚程度の重さということ。

たったそれだけの額で土地が買えるとは。

なんというぼろ儲け。

エレミヤは優れた投資家ですわね。

土地が絶対に返ってくるんやったら、たしかにぼろい商売やな。

言うて、いつ返ってくるんやって話やけど。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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