6.獣の数字(666)

エピソード文字数 1,090文字

また、わたしは一頭の獣が海から上って来るのを見た。

それには十本の角と七つの頭があった。

そして竜がその権威をこの獣に与えたので、人々は竜を拝んだ。

さらに、その獣をも拝んで言った、

「誰が、この獣に匹敵することができようか。誰が、それに戦いを挑むことができようか」。

竜であるサタンは大天使ミカエルによって地上に投げ落とされた。

そして女(聖母マリアと解釈されている)を追いかけたが逃げられてしまう。

その後に海から現れた獣に対し、権威を授けたとされる。

また、わたしはもう一頭の獣が地から上って来るのを見た。

それは子羊に似た二本の角を持ち、竜のような物言いをした。

この獣は、第一の獣がもっていたすべての権力を、その獣の前でふるった。

さらに続けて地上から獣が現れる。

その獣は偶像崇拝をさせ、人々の右手か額に刻印を受けさせた。

その刻印とは、獣の名、もしくはその名の数字である666のことだ。

ここに知恵が必要である。

賢い人は、あの獣の数字を計算せよ。

それは人間を表す数字である。

その数字とは六百六十六である。

666という数字は非常に有名ですわね。

その数字が何かを知らずとも、不吉なものという印象が広まっておりましょう。

伝統的に、海からの獣はローマ皇帝ネロを、地上からの獣は皇帝崇拝を示すとされる。

獣をネロとするのは666の数字を読み解いたもの、ということになっているんだ。

666がネロを表すってのは、どうやって読み解いたんや?

なんとなく数秘術(ゲマトリア)が絡んできそうなんは分かるけど。

まずゲマトリアにおいては、ヘブライ文字に対応する「数価」がある。

それは順に1~9,10~90,100~900となる。

なんとなく分かってきましたわ。

ギリシア語のネロ(Nerōn Kaisar)をヘブライ文字にして、数字を当てはめてみるとか。

……うーん、どうもうまくいきませんわね。

ビヨンデッタの手順は正しい。

けれど少々クセがあるからね。

ヘブライ文字とした場合、נרון קסר (NRON QSR)となる。

すると……。

すごいやん!

ぴったり666になっとる。

なにやらこじつけのような気もいたしますが。

ネロ以外の人物でも上手にすれば666に出来るのではなくて?

それはそうかもしれない。

けれど、ギリシア語ではなくラテン語をベースとしたらどうなると思う?

ネロ(Nerō Caesar)をヘブライ文字に変換するとנרו קסר(NRO QSR)だ。

数価50のヌンが抜けて合計値は616となる。

実は写本の中には666ではなく616と記されているものがある。

するとどちらが正しいというのではなく、どちらも正しいと言えそうだね。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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