1.フィラデルフィア

文字数 1,251文字

「フィラデルフィア」ってアメリカにある都市の名前やろ。

ニューヨーク州の南、ペンシルバニア州にあるとこや。

位置的にはニューヨーク・シティとワシントンD.C.の間やな。

「フィラデルフィア」はギリシア語で「兄弟愛」を指しますわね。

「フィロス(phílos)」すなわち「愛する」

「アデルフォス(adelphós)」すなわち「兄弟」

この二つを結合して、「フィラデルフィア」となりますのよ。

その名付け親はウィリアム・ペン。

プロテスタントの一派、キリスト友会のメンバーだ。

キリスト友会は俗に「クエーカー」と呼ばれている。

クエーカーは英国生まれの一派だけど、そこでは迫害を受けている。

クエーカー(震える人)というのは、神秘体験で身を震わせることに由来する俗称だ。

ウィリアム・ペンは信仰の自由を願って、「フィラデルフィア」と名付けたのさ。

『テサロニケの人々への第一の手紙』第4章9-10節

兄弟愛について、ことさらあなた方に書く必要はありません。

あなた方自身、神に教えられて互いに愛し合っていますし、

マケドニア全地方のすべての兄弟たちに対してもそれを実行しているからです。

しかし、兄弟のみなさん、その愛をますます完全なものとするように勧めます。

パウロは手紙の中で「兄弟愛」について述べている。

テサロニケの信徒たちはなかなか優等生だったらしい。

これ以上説明することもないと言われている。

他の手紙は「お説教」が多かったのに。

テサロニケの人らへの手紙は「激励」って感じやな。

テサロニケの人々は敬虔な信徒だった。

しかし、信じすぎたために少々問題があったらしい。

『テサロニケの人々への第一の手紙』第4章11-12節

そして、腰を落ちつけて自分の務めに専念し、

あなた方に命じていたとおり、自分の手で働くように心がけなさい。

そうしてこそはじめて、外部の人々に対し品位を保つことができ、

また、人の世話にならずに暮らしていけるのです。

なんとキリストの来臨を期待するあまり、将来に備えて働く必要がないと思い始めた。

それはいかんということで、手紙では「働くよう心がけなさい」と言われているのさ。

ノストラダムスの大予言でもちょっとそんな話題あったなあ。

どうせ世界は滅亡するんやから、遊んで暮らしたらええ、みたいな。

百詩篇第10巻72番

1999年、7か月、

空から恐怖の大王が来るだろう、

アンゴルモワの大王を蘇らせ、

マルスの前後に首尾よく支配するために。

(Wikipedia「ミシェル・ノストラダムス師の予言集」より)

よく恐怖の大王の名が「アンゴルモア」と聞く気がします。

予言の詩では、別個の存在でしたのね。

テサロニケの人々皆が働かなくていいと思っていたわけではないだろう。

そんなことになれば組織は維持できないからね。

悪目立ちする人についての報告があったんじゃないかな。

『テサロニケの人々への第一の手紙』第5章14節

兄弟のみなさん、あなた方に勧めます。

けじめのない生活を送る人たちに忠告を与え、小心な人たちを励まし、

か弱い人たちの面倒をみてあげなさい。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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