19.占いの霊ピュトン

エピソード文字数 1,056文字

エルサレム会議の後、パウロは二回目の宣教旅行に出る。

今度はバルナバは別行動で、シラスという人物が同行する。

シラスという名は「森の」を意味するシルヴァヌスから来ているとも言われる。

ローマにおける森の守護精霊の名もシルヴァヌスだね。

そしてローマの植民都市フィリピに着き、信者を獲得したりしていた。

そこである日、一人の女に出会う。

ある日、わたしたちは祈りの場所に行く途中、

占いの霊に取り憑かれている、一人の若い女奴隷に出会った。

彼女は占いをして、自分の主人たちに多くの利益を得させていた。

占いの霊ってなんやろ。

その霊に取り憑いてもろたら、占い出来るようになるんかな。

めっちゃ便利そうやん。

「占い」と訳されているけれど、ギリシア語ではピュトン(Pȳthōn)

英語ではパイソン(Python)となる「ニシキヘビ」のことなんだよ。

要するに蛇の悪霊に取り憑かれた女ってことだね。

ギリシア神話のピュトンは巨大な蛇の怪物で知られていますわ。

神託所デルポイの番人で、自身が神託を授けることもあったとか。

その力を使って占いをしていた、ということですわね。

パウロはその霊に言った、

「わたしはイエス・キリストの名によってお前に命じる。この女から去れ」。

すると、立ちどころに霊は彼女から出ていった。

ここでもイエス様の力が大活躍やな。
しかしこれが災いした。

この女奴隷の占いで儲けていた主人が、パウロとシラスを告訴したんだ。

布教活動が禁じられているユダヤ教を広めようとしていると言ってね。

それでパウロとシラスは逮捕されて、鞭打たれ、投獄されてしまった。

真夜中ごろ、パウロとシラスが神に祈り、

賛美の歌を歌うと、ほかの囚人たちはこれに聞き入っていた。

どのような時も布教活動を怠らない、信徒の鑑ですわね。
ところが突然、大地震が起こり、牢の土台が揺れ動いて、

立ちどころに牢の戸がみな開き、すべての囚人の鎖が解けてしまった。

神様がパウロとシラスを助けようとしてくれたんやろか。

でも、囚人全員の鎖が解けてしもたら、犯罪者も逃げてまうんちゃうか?

看守は開いた扉を見て、囚人たちが逃げ出したと思った。

それで自殺しようとしたところをパウロが声をかけて止めた。

なんと囚人たちは全員その場に残っていたんだ。

この事態に感動したのか、看守はパウロを自宅に招き、家族全員で洗礼を受けた。

その後、パウロとシラスは長官直々の謝罪を受けて自由の身となった。

二人がローマ市民で、不当な扱いを行ってしまったためだと言う。

分かってはおりましたが、二回目の宣教も苦難続きとなりますのね。
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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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