1.ユダとエドムの戦い

エピソード文字数 1,653文字

オバデヤの幻

主なる神はエドムについてこう仰せになる。

わたしたちは主から知らせを聞いた。

使者が諸国に遣わされた。

「立ち上がれ。エドムに対して戦いを起こそう」。

オバデヤがいつの時代で、どういう人物だったかは分かっていない。

タルムードの伝統では、ヨブの友人エリファズの子孫だと言われていた。

オバデヤという名前は「神の僕」と言われる。

現代ヘブライ語ではもっと過激に「神の奴隷」を意味するらしい。

エリファズは全てを失い悲嘆に暮れるヨブをさらに非難した男ですわね。

ヨブに対し「お前が潔白だとして神に何の益があるか」と厳しく責めました。

その子孫であれば、オバデヤもきっと他者に厳しい人物でしょう。

いやいや、先祖がどうや言うて、子孫には関係あらへんやろ。

ひょっとしたら心優しい人物かもしれへんで?

オバデヤがどんな人物なのか盛り上がっているところ恐縮だけどね。

人ではなく「信じる者」イスラエルを表現しているという見解が強いらしいよ。

(フランシスコ会聖書研究所)

何にせよ、オバデヤが誰かを議論することに大した意味は無いだろうさ。

テマン(エドム北部の地域)よ、お前の勇士たちは脅える。

エサウの山から一人残らず絶やされるからだ。

お前の兄弟、ヤコブへの殺戮や暴力のために、

恥がお前を覆い、お前は永遠に滅ぼされる。

そもそもエドムはイスラエルにとって因縁深い国であり人だ。

「エドムの地」でヤコブの兄エサウが住んだ地を意味する。

ヤコブはエサウから長子の権利を奪い、父の祝福まで騙し取ってたね。

『創世記』第27章34-35節

エサウは父の言葉を聞くと大声をあげて激しく嘆き、父に言った、

「お父さん、わたしも、このわたしも祝福してください」。

イサクは答えた、

「お前の弟が、策略を使ってお前の祝福を奪ってしまったのだ」。

ヤコブ、やるじゃない。

さすがイスラエル人の祖先ね。

エサウは怒ってヤコブを殺そうとし、ヤコブはさっさと逃げてしまう。

その後二人は再開して和解……、したように見せてヤコブはまた逃げる。

そんなエサウの子孫がエドム人ということになるわけだ。

そら確かに因縁深いな。

そんでそのエドムに対して戦いを起こすことを預言しとるわけや。

イスラエルとエドムはそれなりに親密な関係を続けて来た。

ダビデやソロモンの時代にはイスラエルの属国だったし。

イスラエルが南北に分かれた後は南ユダ王国に属していた。

『詩編』第60章10節

モアブはわたしの足を洗うたらい。

わたしはエドムの上に履き物を置く。

ペリシテよ、お前は勝どきをあげるのか。

『詩編』はダビデの詩やな。

イスラエルのエドム支配を表現しとる。

しかし履き物を置かれる立場とは、屈辱的でしょう?

これをずっと我慢などできましょうか。

属国で居続けることは耐え難いものさ。

エドムも例外じゃない。

たびたびユダ王国に反旗を翻した。

当然ユダ王国も鎮圧するけれど、完全には抑えられなかった。

そしてバビロン捕囚によりユダ王国は滅亡。

エドム人たちはヘブロンの地域で繁栄。

ギリシアやローマからイドマヤ人と呼ばれるようになった。

あら。

めでたしめでたし、かしら?

しかしエドム人にとっては災難なことに、ユダヤ人たちは捕囚から帰ってくる。

そしてさらに先の時代、ユダ・マカバイの頃。

イドマヤの将軍ゴルギアスをユダ・マカバイが打ち倒す。

彼らはネゲブとエサウの山、低地とペリシテ人を占領する。

またエフライムとサマリアの地を、そしてベニヤミンはギレアドを占領する。

イスラエルの子らで、ハラにいた捕囚の民は、サレプタまでのカナンの地を支配し、

またセフェラドにいたエルサレムの捕囚の民は、ネゲブの町々を占領する。

救う者たちは、エサウの山を裁くためにシオンの山に登ってくる。

そして王権は主のものとなる。

『オバデヤ書』第1章19-21節のこの箇所は、実は後から付け足されたものだ。

その時期はマカバイ時代を挙げる研究者が多い。(フランシスコ会聖書研究所)

『オバデヤ書』はエドムとの因縁の物語。

それの結末として、ユダ・マカバイの話を持ってきた。

最もな話やな。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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