5.諸国の滅び

エピソード文字数 1,743文字

・アンモンの子らに対する裁き

踏み荒らされたイスラエルの地を、そして虜になったユダの家をお前は愚弄した。

わたしはお前を東の民に引き渡し、彼らに領有させる。


・モアブに対する裁き

(モアブがユダ王国がほかの国々と同じになったと愚弄したため)

アンモンの子らとともにモアブを東の民に引き渡して、彼らに領有させる。

今も昔も中東は紛争地帯さ。

エルサレムだけじゃない。

様々な国が存亡の危機を迎えていた。

『イザヤ書』にあった「諸国民への託宣」みたいなもんやな。

アンモン人は子供を生贄にするモレクを拝んどる連中や。

それを東の民に引き渡す言うてるけど、東の民ってのは何者やろか。

東の民はアマレク人のことだ。

『出エジプト記』第17章で戦った民族だね。

モーセが手を上げ続けないと負けそうになるから、両脇で支えてもらったやつだよ。

実際に戦ったのは『ヨシュア記』の主人公、ヨシュアだ。

『エステル記』に登場したハマンがアマレク人の末裔とも言われていますわね。

長きにわたる、イスラエル人の天敵と言えましょう。

・エドムに対する裁き

エドムはユダの家に報復し、その報復によって大きな痛手を与えた。

わたしはエドムに向けて手を伸ばし、その地から人と獣を抹殺して荒れ野とする。

エドムに対する裁きは『マカバイ記』の時代に実現したと言われる。
『マカバイ記』第5章3節

その時、ユダはイドマヤのアクラバタの地でエサウの子らと戦いを交えていた。

彼らがイスラエルを包囲し続けていたからである。

そして彼らに大打撃と屈辱を与え、戦利品を奪い取った。

イドマヤというのは、エドムのギリシア語読みですわね。

「エサウの子」とはまさしくエドム人のこと。

エサウとヤコブは『創世記』におった兄弟やな。

ヤコブがお兄ちゃんのエサウにうまいこと言うて長子の権利を買うとったわ。

イスラエルとエドムの争いは古くから続く兄弟げんかみたいなもの……

かもしれないね。

・ペリシテ人に対する裁き

彼らは心底からのあざけりを抱いて報復し、積年の敵意に駆られてユダを滅ぼそうとした。

わたしはペリシテに向けて手を伸ばし、クレタ人を抹殺して、海辺に残った者を滅ぼし尽くす。

ペリシテ人か。

ダビデにやられたゴリアテがペリシテ人やったな。

クレタ人と言えば「自己言及のパラドックス」が有名ですが……。
その話は先の『テトスへの手紙』を待とう。

論理学の話だから、それなりに準備して進めたい。

かなり先になっちゃうけど……。

代わりに一つ小ネタを。

弐瓶勉の漫画『シドニアの騎士』は英語で『Knights of Sidonia』だけど、

英国バンドMUSEの『Knights of Cydonia』が元ネタではと言われている。

Cydoniaは英語ではサイドニアで、ギリシア語だとキュドニア。

クレタ島にある古代都市の名で、現代ではハニアと呼ばれる都市だ。

キュドン(Cydon)という神がキュドニアを創建したとされる。

キュドンはアポロもしくはヘルメスの子で、母親はアカカリス。

アカカリスの父はミノスと言って、クレタ島の王とされている。

・ティルスに対する裁き

お前を人けのない町のように、荒涼とした町にする。

淵に襲わせ、大水に覆わせる。

ティルスは地中海沿いで、フェニキア人の都市として栄えた。

ここもバビロニアに服属することになる。

淵というのはおそらく深淵のことだろうね。

海沿いだから、海からの脅威の表現となっているのだと思う。

後のアレクサンダー大王によって海上封鎖された都市でもあります。

海で栄えた都市ですから、海から危険が舞い込むのも道理。

・シドンに対する裁き

わたしは町に疫病を、往来に血を送り込む。

四方から差し迫る剣に滅びた者が町じゅうに横たわる。

シドンは元はフェニキア語でシドゥン。

「漁師」とか「漁場」という意味だよ。

これが現代ではアラビア語読みのサイダが一般的になっている。

・エジプトに対する裁き

まことに、主なる神は仰せになる。

バビロンの王の剣がお前を襲う。

わたしは勇士たちの剣を用い、お前の軍勢を崩壊させる。

彼らはみな、残忍無比な異国の民。

バビロニア強いな。

あっちこっち征服しまくっとるわ。

なんてったって大帝国さ。

勝ち目のない相手に挑むよりも、服従し、信仰を永らえさせる。

それも一つの戦い方だったのかもしれないね。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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