2.ミドラーシュ

エピソード文字数 1,073文字

前に何度か聖書解釈文学としてのミドラーシュについて触れたよね。

ミドラーシュはデラーシュ(darash)という言葉が語源となっている。

そのデラーシュは「慎重に捜し求める」「要求する」といった意味だ。

聖書に書かれた言葉を字義通りではなく、隠れた意味なんかを探すのさ。

ユダヤ教学者ジェイコブ・ノイスナー曰く、ミドラーシュには3つの形態がある。

まずはユダヤ教聖書解釈そのもののことを。

そして解釈手法と、解釈集といった書籍自体をミドラーシュと呼ぶ。

ここで僕が言いたいことは、ミドラーシュとは決して過去の遺物ではないということさ。

例えば前に紹介したキング牧師の演説。

聖書の言葉を引用して、人種間に差別なく、公平な世の中にしたいと訴えていた。

あれもまたミドラーシュと言って良いだろう。

ふむ。

要するに、聖書引用して何かしら解釈することをミドラーシュって言うんやな。

それが現在にあてはめるとかでもええわけや。

そういうことだね。

ただ聖書に書いてあることを現在において実践するという話ではない。

そこには少々、アクロバティックな発想が含まれている。

そしてパウロは『ヘブライ人への手紙』でそれをやってのけたんだ。

神の業は世の初めの時から完成していたのです。

なぜなら、聖書のある箇所に、七日目について、

「神は七日目にそのすべての業を終えて休まれた」と言われているからです。

そして「彼らをわたしの安息に入らせることは決してない」と言われているのです。

これは聖書の継ぎはぎですわね。

『創世記』と『詩編』の言葉が引用されていましてよ。

引用における「彼ら」とは、モーセに率いられた民のことだ。

彼らはたびたび神への信仰を見失っていた。

それゆえに神は彼らを「安息に入らせ」なかったと言う。

そして「安息」は単なる肉体的な平和ではなく、霊的な世界のことを指す。

神は最初の七日間で安息の世界、神の国も含めて完成させたのさ。

説得力あるやん。

そんな風に言われたら、そうなんかなって気ぃするで。

そもそものユダヤの教えでは、「安息」はカナンの地だったと思いますが。

それをまるで天国のような霊的な場所に移し替えたのですね。

『詩編』第95章8-11節

「心を頑なにしてはならない、メリバにいた時のように、荒れ野のマサにいた日のように。

あの時、お前たちの先祖は、わたしの業を見ていながら、わたしを試み、わたしを試した。

四十年間の間、わたしはこの世代を忌み嫌った。

そして、わたしは言った、『彼らは心の迷った民、わたしの道を知りはしない』。

そこでわたしは怒り、そして誓った、『彼らをわたしの安息に入らせない』」。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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