天使と悪魔の聖書漫談

7.王子アブサロムの反乱

エピソードの総文字数=1,304文字

アブサロムはイスラエルで最も美しいと言われるほどの美丈夫だった。

彼は民衆の人望を集め、その勢いはダビデを凌いですらいたんだ。

長男だったアムノンは彼の手によって死んだ。

このまま行けば何もせずとも彼が次の王になる。

せやのに謀反したんか。

何でやろ。

預言者ナタンによって、ソロモンに「エディドヤ」という名が与えられたんだ。

「エディドヤ」とは「主に愛された者」という意味。

要するにソロモンこそがダビデの後継者であるということになる。

ダビデは後継者について語らない。

焦れたアブサロムが王位を狙って動いた……。

なんて話かもしれないね。

それっぽい話ですけれど、本当かしら?

案外、彼をそそのかす悪人でもいたのではなくて?

その可能性もあるね。

ダビデやアブサロムの政治顧問、アヒトフェルという男がいる。

アヒトフェルはアブサロムについて謀反に協力した。

彼は実はソロモンの母、バト・シェバの祖父だと考えられているんだ。

バト・シェバは夫を殺された不幸な女や。

ダビデに恨みを持っとってもおかしない。

その孫娘の恨みを晴らしたろう。

そういう話か?

愛し愛され憎み憎まれ。

復讐が復讐を呼び混沌とす。

愉快ですわ。
民衆の心はアブサロムに移り、ダビデは窮地に立たされた。

エルサレムを脱出し、家来を連れてオリーブ山の坂道を上った。

オリーブ「山(やま)」と言っても、その高さはさほどでもない。

エルサレムよりも数十メートル高いくらいなんだ。

北西にはかの有名なゲッセマネ(オリーブの油搾り場)があるよ。

エルサレムの目と鼻の先か。

高所なら有利に戦えそうやな。

ダビデは友人のフシャイをアブサロムのところに送る。

そしてフシャイは大きな役割を果たすんだ。

アヒトフェルはアブサロムに対し、速やかな決戦を提案した。

しかしフシャイはダビデは勇者であるから、より多くの兵を集めるべきと言った。

アブサロムはフシャイの案を採用した。

兵は拙速を聞くも、未だ巧(たくみ)の久しきを賭(み)ざるなり。

時間をかけるっちゅうことは、相手に時間を与えるってことやで。

アブサロムはおぼっちゃんやからな。

戦争のことは何にも分かっとらへん。

対するダビデは少年の頃から戦い続けてきた。

勝てると思う方がどうかしている。

ダビデは速やかに撤退し、マハナイムにて兵を整えた。

アヒトフェルは自ら首をくくって死んだ。

あら。
アレクサンダー・フランシス・カークパトリック。

19世紀後半にケンブリッジ大学で欽定教授を務めていた人だけどね。

彼によれば、記録上、最初の意図的な自殺だそうだよ。

たぶん、この時点でもう勝ち目は無いと思ったんやろな。

ダビデに勝つには奇襲しかない。

そして決戦の時が来た。

けれどダビデはアブサロムを殺さないよう兵に伝える。

しかし、歴戦の勇士ヨアブはそれを無視したんだ。

彼はアブサロムの心臓を槍で貫いた。

またしてもヨアブですの?

殺された弟の恨みで、ダビデの意に反してアブネルを殺した男でしょう。

実はバト・シェバの夫ウリヤを激戦地に送ったのもヨアブの働きだったりする。

要するに汚れ役。

ダビデの暗部ってとこやな。

綺麗ごとだけでは済まされない。

そういう世界において、ヨアブは最大の貢献者なのかもしれないね。

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