3.独身主義

エピソード文字数 961文字

『創世記』第2章18節

また神である主は仰せになった、

「人がひとりでいるのはよくない。彼にふさわしい助け手を造ろう」。


『創世記』第2章24節

それ故、男は父母を離れて、妻に結ばれ、二人は一体となる。

近頃は結婚せえへんでもええやんって風潮ある。

それはそれでええけど、結婚は結婚でやっぱりええもんや。

あと、時代の要請もあるやろな。

夫婦は社会の最小単位。

人が生きていくには社会を維持していかなあかん。

生き残るのが困難な世界において、結婚はある種の手段。

結婚しない自由を主張できるのは、非常に恵まれた世界とも言えましょう。

結婚したいから結婚する。

結婚したくないけど結婚する。

結婚したいけど結婚できない。

人生色々だね。

ともあれ聖書の世界において結婚は重要な行為だ。

仏教やキリスト教なんかだと僧侶の婚姻が認められなかったりするけど。

今まで見て来た預言者たちは多くが結婚している。

そんな中、なんとエレミヤは神から結婚するなと指示されるんだ。
主の言葉がわたしに臨んだ、

「お前は娶るな。この所で息子や娘をもたないようにせよ」。

は?

何、ふざけたこと言うとんねん。

お姉さまったら、神に向かってなんと乱暴な。
何事か、そばへたること仰りますやら。
どうして結婚するなと言ったか。

それはこの後に続く言葉を見ればおおよそ理解できる。

まことに、主は、この所で生まれる息子や娘について、

またこの地で彼らを産むその母親たちについて、

彼らをもうけるその父親たちについて、こう仰せになる。

「彼らはひどい病で死ぬ。彼らは悼まれることも、

葬られることもなく、地面の肥やしのようになる。

彼らは剣と飢えによって滅び、その屍は空の鳥や地の獣の餌となる」。

要するに子供をもうけたとて、未来は暗い。

むざむざ不幸な子を増やすよりは未婚のままでいろと。

将来に希望が持てへんのやったら、子供産みたないってなるわな。

なんかそういう話、どっかで聞いた気ぃするわ。

そしてまたいつも通り。

異教の神々を拝む人々を厳しく叱責する。

そのようなことばかりでは明るい未来もない。

結婚など無意味というわけさ。

まさに信念による独身主義。

こうもかたくなであれば、サタンとしては誘惑したいのでは?

そういうのはビヨンデッタが得意だろう?

愛しのアルヴァーレ様はもうお忘れかい?

わたくしにも、外見的な好みがありましてよ。
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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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