31.革命家イエス

エピソード文字数 1,205文字

イエスは神殿の境内で商売をする連中を追い払った。

そこに祭司長や長老といった人々が来てイエスに問うた。

いったい何の権威があって、そんなことをしたのか、と。

イエスは神の子なのでしょう?

であれば当然、神に与えられた権威なのではなくて?

彼が神の子、メシアであるとこの場で言えばすぐに逮捕されるだろう。

だから彼は別の方法で相手を言いくるめたのさ。

イエスはお答えになった、

「わたしもあなた方に一つ尋ねる。

それに答えるなら、わたしも、何の権威をもって、あのようなこをするのかを言おう。

ヨハネの洗礼はどこからのものか。

天からのものか、それとも人からのものか」。

容易い問いですこと。

こんなもの、「人から」と答えてしまいでしょう。

しかし民衆たちはヨハネを預言者だと信じている。

その権威は天からのものだと言わなければ、民衆の怒りを受ける。

さりとて祭司長たちはヨハネを信じなかった人々だ。

今さら「天から」などと答えれば、その過去を指摘されてしまう。

結局、彼らは保身のために「分かりません」と答えるしかなかった。

イエスもそれに応じて、権威については語らないで終わらせた。

イエス様は議論に強い人やってんな。

まるでソフィストをやり込めるソクラテスみたいや。

そこでイエスはぶどう園の地主についてたとえ話を始めた。

地主は収穫を取り立てるため、小作人に使いを出した。

これは普通の光景だろう。

しかし驚くべきことに、小作人たちは使いの者を捕まえた。

一人は打ち叩き、一人は殺し、一人は石打ちにしてしまう。

乱暴な連中やな。

あかんやろ、そんなことしたら。

地主は自分の子なら小作人たちも敬うだろうと期待した。

それで子を送ったら、小作人たちはその子を殺して相続財産を奪おうと言う。

地主の息子さえも小作人たちに殺されてしまったんだ。

暴徒かしら。

兵を送り、鎮圧すべきではなくて?

イエスの周囲の人々もそのように考えただろうね。

この小作人たちを殺し、別の小作人を雇うべきだと言った。

しかしイエスはそれに同意せずに言うんだ。

家を建てる者たちが捨てた石、これが隅の親石となった。

それは主の行われたことで、われわれの目には不思議に見える。

『詩編』第118章22-23節

家を建てる者らの捨てた石が、隅の親石となった。

それは主の業(わざ)、わたしたちの目には不思議なこと。

イエスはこう言う。

「神の国はあなた方から取り上げられ、神の国の実を結ぶ民に与えられる」と。

なんとまあ。

それでは革命ではありませんか。

地主を解体し、小作人に土地を与えよと?

汗水たらして働いた者がその報いを受けるべき。

これを聞いて、祭司長たち、ファリサイ派の人々は恐れた。

これは権力批判だと気づいたんだね。

自分の財産が脅かされそうになっとる……。

そんで、この人らはイエス様をどうにかせなあかん思うようになるんやな。

そこで、イエスを捕らえようとしたが、民衆を恐れた。

民衆がイエスを預言者だと思っていたからである。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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