11.紅海の渡航

文字数 1,082文字

ついに来たな。
ついに来たね。
画像は映画『十戒(The Ten Commandments)』のクライマックスだね。

エジプトから脱出したイスラエルの民を率いて、モーセが海を割るシーンだ。

旧約聖書のイメージっちゅうたらこれやな。

モーセが海を割るとこや。

聖書を1行も読んだことない人でも知ってる場面だね。

大勢の人が道を開ける光景を「十戒のようだ」なんて言ったりもするね。

それくらい人々に強烈な印象を与えたってことだろう。

しかし、この海って実際どこらへんのことなんや。
これも正確なところは分かっていない。

おそらく今のスエズ運河らへんだとは思う。

今とは地形も変わっているだろうし、解明は困難だね。

ファラオと家来たちはイスラエルの子らの解放を悔いた。

えり抜きの戦車600に士官を乗り込ませ、後を追った。

軍勢はバアル・ツェフォンの前のピ・ハヒロトに迫った。

まだ追いかけてくるんか。

タフなやっちゃな。

ここでイスラエルの民を連れ戻しても、また同じことの繰り返しだろうに。

聖書ではこのファラオの行動も神様の意思なんだ。

イスラエルの民はモーセに言った。

「荒れ野で死ぬよりエジプト人に仕える方がマシだ」と。

モーセは民に言った。

「恐れてはならない。神様があなたたちのために戦われる」

モーセが手を海の上に伸ばした。

すると、神様は激しい東風で海を押し返し、海を陸地とした。

イスラエルの子らは乾いた土の上を進んだ。

水は右も左も壁のようになった。

絶景やな。

うちも歩いてみたいわ。

視覚的に、これ以上無いくらいのインパクトだよね。

この場面の絵はいくつもあるけれど、見れば滝の音が響くような気さえするよ。

ナイアガラの滝とか見て、モーセの海割りを連想したりするんやろか。
モーセが海に手を伸ばすと、水は元に戻り、エジプト人たちを覆った。

彼らのうちで逃れた者は一人もいなかった。

ついに決着か。

長い戦いやったな。

アロンの姉、女預言者ミリアムはタンバリンを手に取った。女たちもみなタンバリンを持ち、彼女に続いて踊りながら出てきた。ミリアムは彼らに答えて歌った、


主に向かって歌え。

主はその栄光を輝かし、

馬と戦車を

海に投げ入れた

アロンの姉っちゅうことは、モーセの姉でもあるんやな?
その通り。

そしてこのミリアムという名前、これこそが「マリア」の由来になるんだ。

ヘブライ語で「ミリアム」は、アラム語で「マリアム」、ギリシア語で「マリア」となった。

ともあれ、これにて一件落着。

みんな幸せに暮らしましたってとこか。

残念ながらそうもいかない。

エジプト人との戦いは終わったけれど、ここからさらに長い、生き残るための戦いが始まるんだ。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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