4.背信の妻エルサレム

エピソード文字数 864文字

『エレミヤ書』第3章8節

背信のイスラエルが姦淫を行ったので、わたしは彼女を離縁し、離縁状を渡した。

しかし、不忠実な女、彼女の姉妹ユダは恐れず、

自ら進んで同じことを行ったのをわたしは見た。

こんな風に、『エレミヤ書』では国を女性に喩えて表現した。

北イスラエル王国が姉で、南ユダ王国が妹というわけだ。

『エゼキエル書』も同じような表現をしている。

国名ではなく、都市名でね。

サマリアはお前の姉。

彼女とその娘たちは北に住んでいる。

南に住むソドムとその娘たちはお前の妹。

ソドム?

神様怒らせてとうの昔に滅ぼされとらへんかったか?

そのソドムだよ。

神は「わたしは彼女たちを滅ぼした」と続けて語っている。

『創世記』第19章24-25節

主は硫黄と火を主の所から、天からソドムとゴモラの上に降らせ、

これらの町々と盆地一帯、その町々の全住民とその土地の草木とを、滅ぼされた。

ソドムの滅亡はイスラエル建国よりもはるか昔のこと。

それが「妹」というのも不思議な気がいたしますわね。

なんでだろうね。

ぱっと思いつくのは都市の規模とか……。

でも、すでに存在しない都市と比較するのは無理があるかも。

うーん。

「三姉妹」ってところが、なんとなく北欧神話の女神を思い出させるなあ。

長女が過去で次女が現在、そんで三女が未来。

サマリアが過去にあったことで、ソドムはエルサレムの未来の暗示、とか?

物語としては面白いかもね。

ともあれ、エルサレムはソドムと並び称されるほどに罪深い都市となった。

それどころか神に「姉妹をより真っ当だと思わせた」とさえ言われてしまう。

つまり、比較的エルサレムが一番ひどいということだね。

情欲的な隣国のエジプト人と姦淫し、私の怒りをかき立てた。

お前は飽くことを知らず、アッシリア人と姦淫した。

商業の地カルデアとも姦淫を重ねた。

お前がしたことはすべて、恥知らずな娼婦のそれと変わらない。

要するに様々な国に庇護を求めたということですわね。

そしてその国の庇護を求めれば、宗教的支配ももたらされます。

ゆえにあちらこちらの神を拝み、それが「姦淫」と呼ばれたのでしょう。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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