21.ヘロデとピラト

文字数 960文字

イエスは逮捕され、その身柄はピラトの元へと送られる。

しかしピラトにしてみれば、イエスに何か罪があるとは思えない。

そこで彼は、イエスの身柄をヘロデ・アンティパスへと送ることにしたんだ。

イエスはエルサレムの住人ではありませんでしたものね。

ピラトにとっては管轄違いということでしょう。

それで責任まるごとヘロデに押し付けたのかしら。

押し付けたなんて、聞こえが悪いね。

相手を尊重したからこその対応だよ。

現に、ヘロデはピラトの対応を非常に喜んだ。

ヘロデはイエスを見ると、非常に喜んだ。

イエスに会い、その奇跡を見たいと望んでいたからである。

しかしイエスはヘロデの問いに沈黙で答えた。

なんで黙ってもうたんやろ。

やっぱ預言成就のために、ここで助かるわけにはいかんかったんかな。

それもあるかもしれないね。

ここでの沈黙は、奇跡が不要であるという判断じゃないかな。

ヘロデの好奇心を満たすためだけに奇跡を起こすわけにはいかない。

けち臭いのね。

聞けば、モーセはファラオの前で奇跡を示したと言うではありませんか。

杖か何かを蛇に変えて差し上げれば良かったのに。

がっかりしたヘロデは兵士たちにイエスを「なぶりもの」にさせた。

しかしヘロデもイエスを死刑にすることはなく、派手な衣を着せてピラトに送り返した。

ヘロデがピラトと同じ考えと知り、互いに親密になったと言う。

ここに一つ、預言の成就が見られる。

『詩編』第2章1-3節

なぜ、国々は騒ぎ立ち、諸国の民はむなしいことを企むのか。

主とその油注がれた者とに逆らって、地上の王たちは立ち上がり、君主たちは語り合う、

「さあ、彼らの枷を打ち砕き、軛を解き捨てよう」。

イエス様を送り返されたピラトは、ヘロデの判断を頼もしく思ったんやろな。

やっぱりイエス様に罪は無いんやて。

ピラトはヘロデの判断を掲げながら民衆に訴えた。

「この男を釈放する」ってね。

しかし民衆は反対した。

「その男を殺せ。バラバを釈放しろ」と言う。

バラバについては以前に触れた通りだ。

もはや理屈でどうこうする時はとうに過ぎております。

あとは死に至る一本道。

ピラトは、三度彼らに向かって言った、

「この男には、死に値する罪は何も認められなかった。

だから懲らしめたうえで、この男を釈放することにする」。

しかし人々はイエスを十字架につけるよう主張し、大声で要求した。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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