7.酒は飲んでも飲まれるな

エピソード文字数 1,173文字

ぶどう酒は程よく飲めば人にとって命に等しい。

ぶどう酒のない人生とは何であろうか。

それは、もともと喜びのために造られた。

深酒は愚か者に怒りを燃やさせ、自ら障害を招き、

体力を弱め、傷をもたらす。

ぶどう酒は程よく飲めば人にとって命に等しい。

食糧と財貨について書かれた『漢書』の『食貨志』にも書いてあるやろ。

「酒は百薬の長」やて。

ほんま、その通りやで。

ちなみにうちの好みはカベルネ・ソーヴィニヨンの赤ワインや。

覚えといてや。

酒に別腸(べっちょう)有り。

甘いものは別腹、と似たような言葉ですわ。

洋の東西を問わず、酒好きの多いこと。

「ぶどう酒のない人生とは何であろうか」など、完全に呑兵衛の台詞でしてよ。
そして飲み過ぎれば失敗する。

はるか昔から言われ続けていることだ。

しかし人は同じ過ちを繰り返す。

酒の席で隣の人をなじったり、

彼がいい気分になっているのにさげすんだり、

侮蔑の言葉を浴びせたり、

負債の返済を迫って困らせたりするな。

いや、負債の返済て。

金返したりいや。

宴会の場であれば、空気を読めということでしょう。

金の話はまた今度。

真面目に解釈すれば、酔った状態で金銭の話をするのは良くないってことかな。

数字を間違えたり、記憶違いを起こしたり。

言った言わない論争にもなりかねないからね。

ただなんとなく、著者のベン・シラ自身の気持ちな気がする。

酒を飲んでる時は楽しく過ごさせてくれよって言っているみたいだ。

ところで、ぶどう酒と言えばフランスが有名でしょうが。

イスラエル産のぶどう酒とは聞き覚えがありませんわね。

今も造っているのかしら。

もちろんだとも。

日本だとまだ馴染み薄いけどね。

ゴラン・ハイツ・ワイナリーのブランド「ヤルデン」は世界的に評価が高い。

ヤルデンもカベルネ・ソーヴィニヨンで赤ワイン出してるんやな。

これは是非飲んでみんと。

ベン・シラも同じ赤ワインを飲んでたんやろか。
残念だけど、それはない。

何故なら、古代イスラエルで飲まれたぶどう酒の品種が不明なんだ。

カベルネ・ソーヴィニヨンにしてもメルローにしても、ヨーロッパ原産だ。

イスラエルワインと言っても、それは新しいワインに過ぎない。

かつての味は失われたままということですわね。

品種が同じでも育った大地が違えば味も変わる。

イスラエル独自の味ということは間違いないさ。

実は面白い話がある。

イスラエルで、古代の味を復活させようというプロジェクトがあるんだ。

古代のぶどうを復活させるってことか?
その通り。

ワイン造り専門家エリアシヴ・ドローリ(Eliyashiv Drori)と、

イスラエルにあるアリエル大学が協力して研究を進めている。

今のところ完成したという話は聞かないけどね。

うまくいけば、イエス・キリストが飲んだのと同じワインが飲めるかもしれない。

救世主の赤ワインか……。

世界的ヒットは約束されたも同然やな。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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