1.ユダの王ダビデ

エピソード文字数 1,092文字

イスラエル、と言ってもその勢力はバラバラだった。

古代の国家は大抵そうだけど、小国家が乱立して勢力争いをする。

そんな中、ユダ(JUDAH)の地で勢力を伸ばしたのがダビデだった。

彼はサウルとヨナタンの死後、神に導かれてユダの王になったとされる。

ユダの王になった言うて、それはイスラエルの一部って話やな。
その通り。

他の地域はサウルの子、イシュ・ボシェテの支配下にあった。

そして彼を補佐したのがサウル軍総司令官ネルの子、アブネルだった。
イシュ・ボシェテですって?
なんという滑稽なお名前かしら。

それは「恥の人」という意味でしょうに。

そうだね。

その名は実のところ、ユダ族の嫌がらせみたいなもんさ。

彼の本当の名はエシュ・バアルだと言われている。

この「バアル」というのが、異教の神バアルと重なるのさ。

ただ、ここでの「バアル」は単に「主人」とか「飼い主」という意味なんだ。

因縁浅からぬ名前やしな。

敏感になるんもしゃあないわ。

イスラエル軍とユダ軍の戦いが始まった。

イスラエル軍のアブネル、ユダ軍のヨアブが陣を敷き対峙した。

ユダ軍が優勢であったが、ヨアブの弟アサエルはアブネルに討たれた。

アサエルという名前は「神が作った」という意味になる。

優れた人物と表現されているけれど、あっさりアブネルに敗れてしまった。

戦争は勇猛果敢な奴から死んでいくんや。

功を焦ったな。

アサエルを失っても全体としてユダがイスラエルを圧倒し続けた。

イスラエルの勢力は徐々に衰えてしまう。

人間、貧すれば鈍する。

イスラエル国内でトラブルが起きた。

かつてサウルの側妻(そばめ)であったリツパとアブネルは通じていた。

父の財産である側妻に手を付けたことにイシュ・ボシェトは怒った。

それに対しアブネルは退かず、むしろイシュ・ボシェトを非難した。

アブネルはダビデに手を貸す約束をした。

そしてその条件として、ダビデは妻ミカルを返すように言った。

ミカルはもう別の男の妻になっとったやろ?

返してもらえるんか?

ダビデからイシュ・ボシェトに使者を送るんだ。

「ペリシテ人の包皮と引き換えに娶った妻ミカルを返してくれ」ってね。

ミカルは生涯「包皮と引き換えの妻」って言われるんやな。
ともあれイシュ・ボシェトはそれに応じた。

でも現在の夫パルティエルは不服だったらしい。

泣いてミカルに追いすがったんだ。

みっともない。

けれど、愛する者と引き離される悲しみは理解できましてよ。

パルティエルはアブネルに「帰れ」と言われて帰っていった。
悲しいなあ。
かくしてミカルは改めてダビデの妻となった。

アヒノアム、アビゲイル、マアカ、ハギト、アビタル、エグラ。

数多くいる妻たちの一人にね。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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