1.エレミヤ

文字数 998文字

『エレミヤ書』も『イザヤ書』と同様にイスラエルの滅びを予言する。

ただ、『エレミヤ書』の方が真に迫るものがある。

エレミヤ自身、ユダ王国の滅亡、バビロン捕囚に至るまで活動した人物だと言う。

苦しみの声が心にまで響いてくる。

ユダ王国の滅びなど、『列王記』にてとっくに語られているものを。

同じことを何度も何度も飽きもせず。

よほど悔しかったのでしょう。

実にけっこう。

好きなだけ嘆くがよろし。

エレミヤは預言者なんやろ?

やっぱり悪い預言ばっかして怒られたんかな。

もちろんさ。

暗い未来を語る敗北主義者が歓迎されるわけもない。

エレミヤはエルサレムで殺されそうになるまで迫害される。

さらに、伝承によれば最期はエジプトで石打によって殺されたという。

苦難の時代を苦難のままに生きた人物だと言える。

主の言葉がわたしに臨んだ、

「わたしは、お前を聖別し、諸国の民の預言者とした」。


わたしは言った、

「ああ、わたしの神、主よ、

わたしにはどのように語ればよいのか分かりません。

わたしはまだ若者にすぎないのですから」。

あらあら。

エレミヤは怖気づいておりますのに、神の無慈悲なこと。

誰だって最初は怖い。

うちかて、エデンでもっとぬくぬくしとりたかったけど、

今や立派な観察者やで。

そ、そうだね。
弱気になるエレミヤを神は励まして言う。

「わたしはお前とともにいて、お前を必ず救い出す」とね。

かくしてエレミヤは神に召命された。

しかしてエレミヤの首尾やいかに。

それはすでに誰もが知るところ。

イスラエルは散々神をないがしろにしたと神に文句を言われます。

イスラエルの民はこのわたくし、バアル・ゼブルに懸想いたしますゆえ。
「お前は背信のイスラエルの行ったことを見たか。彼女はあらゆる高い山の上、また葉の茂るすべての木の下に行き、姦淫を行った。」

「背信のイスラエルが姦淫を行ったので、わたしは彼女を離縁し、離縁状を渡した。しかし、不忠実な女、彼女の姉妹ユダは恐れず、自ら進んで同じことを行ったのをわたしは見た。」

この姦淫ってのは、よその神々を拝んどるっちゅうことやな。

ビヨンデッタの言う通りやで。

みんな、姿の見えへん神様よりも、目の前の像を拝みたがるからな。

イスラエルとユダの両国を「姉妹」と表現しているね。

イスラエルが離縁されたというのは、イスラエル王国滅亡のことを言っているのかな。

バアルを拝む人々を浮気者として神は許さない。

厳しい罰を与えることになる。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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