1.信仰の戦い

文字数 1,018文字

『テモテへの第一の手紙』第1章18-19節

わたしの子テモテ、あなたについて以前になされた預言に従って、次の命令を授けます。

あなたは、この預言に励まされ、信仰と曇りのない良心をもって、雄々しく戦い抜きなさい。

ある人々はこの良心を捨てたために、彼らの信仰は暗礁に乗り上げました。

今までの書簡は教会の信徒たちに向けたものだった。

この『テモテへの第一の手紙』は名前の通り、テモテ個人に宛てたものになっている。

テモテは『使徒言行録』にもその名がある、教会の監督役だ。

内容それ自体は他の書簡とも被るところが多い。

律法主義に陥らず、律法を正しく用いること。

愛を持って人々と接し、清く正しく生きなさいって感じだ。

退屈な手紙ですこと。

わたくしでしたら、もっと情熱的な愛の手紙を所望いたしますわ。

それが男であろうが女であろうが、構いませんことよ。
「雄々しく戦い抜きなさい」ってまた物騒やな。

何と戦うつもりなんや。

それは今まで、偽使徒と呼ばれて来た者たちとさ。

『テモテへの第一の手紙』では偽教師とされている。

使徒が教え導く者で、教師が教え諭す者というニュアンスの違いはあるけど。

似たようなもんじゃないかな。

偽教師ですか。

ここはやはり、いつものグノーシス主義かしら。

グノーシス主義だけじゃない。

律法主義的な教えもあったみたいだよ。

『テモテへの第一の手紙』第3章3節

この偽りを語る人々は、結婚を禁じたり、ある食物を断つことを命じたりします。

しかし、この食物は、信仰があり、真理を悟っている人々が感謝して食べるようにと、

神がお造りになったものです。

食べ物はコーシェルみたいな決まりがあったからな。

キリスト教やと、そのへん気にせんでもええことになっとる。

せやのに、それよりかは律法に従った方がええんちゃうかって思うんかな。

厳しさの中にこそ聖なるものが見える、みたいな気持ちかもしれへん。

せっかく律法から離れようとしているのに、引きずり戻そうという人がいる。

手紙はそんな連中を「偽教師」と呼んだのさ。

『テモテへの第一の手紙』第6章20節

テモテ、あなたに委ねられたものを守りなさい。

世俗的な無駄話と、偽って「知識」と称している反対論とを避けなさい。

古代ギリシア語における「知識」をグノーシスと申します。

まさしくこの箇所はグノーシス主義への反駁となるところですわね。

初期キリスト教の歴史は異端との戦いだ。

しかし何が異端かを定めるにあたって、どこまで一枚岩でいられたのかな。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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