5.善い夫と悪い夫

エピソード文字数 991文字

わたしの心は三種類の人を嫌う。

わたしはその生き方をはなはだしく忌み嫌う。

ベン・シラことイエススはまず、三つの憧れについて語る。

それは兄弟の和、隣人愛、夫婦の睦まじさだと言う。

そしてその後に、嫌いな種類の人間について語るんだ。

対比的な構造になっているのさ。

もったいぶるものではなくってよ。

その三種の忌み嫌うべき生き方とはどのようなものかしら。

・おごり高ぶる貧しい者

・嘘つきの金持ち

・知性のない、姦通を犯す老人

とまあ三つ並べたけれど、一番の問題は知性のない老人だ。

ここではさらに詳しく老人について語っている。

若い日に、知恵を蓄えなかったなら、

どうしてお前は、年老いてから、それを手に入れることができようか。

知恵は積み重ねやからな。

長いこと放置しといて、慌てて取り戻そうとしてもあかん。

いくらでも見つけられましてよ。

偉そうに説教をする割りに、底の浅さが透けて見える老人ども。

賢いものは態度など変えずとも尊敬されるもの。

知恵の無さを大声でごまかす連中のなんと醜悪なこと。

立ち居振る舞いと、知性の有無は必ずしも相関しないけどね。

ただ一致するものでもないから、ギャップが目立つのさ。

そのギャップが目立ってもうて、腹立つんやな。
そうだね。

よく古代から老人は若者を批判すると言うけど、それは一方的なイメージだ。

聖書では老若男女、ダメなものはダメと批判している。

哲学者プラトンが「近頃の若者は目上の者を尊敬せず」とか言ったと聞くよね。

でもそのルーツを辿ろうとしても、せいぜい20世紀アメリカの新聞くらいしか出ない。

少なくとも僕の記憶ではプラトンの著書にそんな話は出てこない。

下らない愚痴のために、貴重な紙とインクを使うとは思えませんわね。

石板にでも彫ってあったのなら話は別ですが。

知恵を見出す者は何と、素晴らしい人であろう。

しかし、主を畏れる人に勝る者はない。

聖書やからな。

何を置いても神様が一番やで。

思慮分別を身につけ、知恵を見出すことは素晴らしい。

しかしそれ以上に神を畏れることが大事だと言う。

言い換えれば、神を畏れず、知恵だけを身につけようとしてもダメということ。

神を畏れなければ、それは知恵とも呼べないということだろう。

善い妻を持った夫は幸い。

彼の寿命は二倍に伸びる。

善い妻は賜物。

これは、主を畏れる者に与えられた分け前。

神様を畏れ敬うことや。

そしたらええ嫁さんもろて、寿命二倍でうはうはや。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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