15.美女アビゲイル

エピソード文字数 1,025文字

そう言えば、ダビデの嫁さんはどないなったんやろ。

うちに名前似とったからな。

気になるんよ。

ああ。

彼女ならとっくに他の男に嫁いだよ。

な、なんやて。
サウルが彼女をパルティという男に与えたんだ。

王として娘を遊ばせておく手は無いからね。

女を道具か何かかと思っているのかしら。
僕らの価値観でどうこう言うのも良くないよ。

娘の嫁ぎ先を用意するのは親の務めなのさ。

サムエルは死んだ。

イスラエルの民はその死を悼み、サムエルをラマに埋葬した。

えらい、唐突やんけ。

もうちょっと死ぬ前に神様の言葉とか無かったんか。

ちゅうか、『サムエル記』やのに、ええんか?

ここまだ上巻で、下巻まであるやん。

まあ、後でちょろっと登場するから。
マオンにアビゲイルという聡明で美しい女性がいた。

彼女にはナバルという夫がいたが、彼は行状の悪い男だった。

ダビデはナバルに使者を送り、自分たちに物資を差し出すように言った。

彼としては、ナバルに属する羊飼いたちの安全を守ってきたというのだ。

ダビデ、ちんぴらやな。

守ってやっとんのやから誠意見せろ言うんやろ?

聖書ではもう少し丁寧な表現だけどね。

まあ、その通りだよ。

わたくしならば追い払うところですわ。
なんと、ナバルはそうしたのさ。

ビヨンデッタが言うように、ダビデの使者を追い払った。

しかもダビデを脱走奴隷に喩えてね。

ちんぴらのダビデは怒るやろな。
ダビデは部下に剣を持つように命じた。

ナバルに罰を与えるためである。

夫の無礼を聞いたアビゲイルは、食糧や家畜といった物資を集めてダビデの元に来た。

17世紀スペインの画家、ファン・アントニオ・デ・フリアシ・エスカランテによる。

見ての通り、左がダビデで右がアビゲイルだね。

おいしそうな羊たちですこと。
アビゲイルは夫ナバルのことを悪し様に言い、ダビデに慈悲を求めた。

ダビデはそれに応えて、手を引くことにした。

そうとは知らなかったのがナバルだ。

彼はダビデが逃げ帰ったとでも思ったのか、酒宴を開いてひどく酔った。

朝になってナバルの酔いが冷めたタイミングで、アビゲイルが事の次第を伝えた。

するとナバルはショックで固まり、十日後に死んでしまう。

ろくでもない男がしょうもない死に方をした。

金持ちで美人の嫁さん持ってても、愛想尽かされとったんやろな。

その後、ダビデはアビゲイルを妻として迎えに行く。
へえ。

やるやん。

実はその前に、イズレエルのアヒノアムという女性も娶っていた。

だからアビゲイルは3人目の妻ということになる。

いつの間に。
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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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