30.エルサレム入城

エピソード文字数 1,057文字

「シオンの娘に告げよ。見よ、あなたの王が来る、

柔和で、ろばに乗って、荷運びろばの子ろばに乗って」。

ついにイエスはエルサレムに入りますか。

しかし、ろばに乗って入るとはなんとも貧相な。

馬ではなくろばを選んだのは、重荷を背負うという姿を現すためと言う。

ユダヤ人たちが異邦人の法という重荷を背負っている、その比喩としてね。

また、フランシスコ会聖書研究所の注記ではソロモン王を思わせる、とある。

「父ダビデのろば」に乗って王となり、エルサレムに入ったとね。

しかしこれは間違いで、正確には「ろば」ではなく「らば」だ。

その間違いに目をつむれば、確かに類似の印象を読み手に与えるだろう。

(2015年5月31日初版2刷の聖書を参照)

らばは馬とろばの交配種やからな。

似たようなもんやで。

『列王記上』第1章44-45節

(祭司アビアタルの子ヨナタンがアドニヤ王に言った)

(ダビデ)王は、祭司ツァドク、預言者ナタン、ヨヤダの子ベナヤ、

それにクレタ人とペレティ人をソロモンにつけて送り出しました。

彼らはソロモンを王のらばに乗せて行き、

ギホンで祭司ツァドクと預言者ナタンが彼に油を注いで王としました。

そこから喜びの声をあげながら彼らが戻ってきたので、町が騒がしいのです。

あなたが耳にした声はそれです。

そしてイエスを群衆は歓迎した。

なんと自分たちの上着を道に敷いて、イエスを招き入れたんだ。

そして群衆たちは「ホサンナ」と叫んだと言う。

ホサンナはヘブライ語でホーシーアー・ナー。

「どうか、救ってください」の意味ですわね。

現代では意味が薄れ、ただ神を賛美する掛け声のように使われております。

イエスは神殿の境内にお入りになった。

そして境内で物を売り買いしている者たちをみな追い出し、

両替人の机や、鳩を売っている者たちの腰掛けを倒された。

バレンティン・ド・ブローニュ作「両替人を神殿から追い出すキリスト」

テネブリズムと呼ばれる絵画スタイルが特徴のフランス人画家だよ。

机を引き上げられてひっくり返る人々が躍動的に描かれているね。

右上にぽっぽちゃんおるな。
平和の象徴が形無しですこと。
これはちょっとした事件だ。

セント・トーマス大学のデイビッド・ランドリー教授曰く、

この事件はイエスの死のトリガーとなったと言う。

両替人がいるのであれば、金銭に絡む権益もありましょう。

となればこのイエスの「暴挙」を恨む者も大勢いる。

元々敵対していた律法学者らを勢いづかせてしまうやもしれませんわね。

イエス様はあえていばらの道を歩まれるんやな。

ほんま信仰厚いっちゅうか、熱い人やで。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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