2.大天使ラファエル

文字数 1,663文字

盲目のトビト、夫を7人亡くしたサラ。

二人の祈りは神に聞き届けられた。

そして二人を癒すため、大天使ラファエルが遣わされた。

ララちゃんやないか。

あのちびすけがこないに立派に育って……。

ミカちゃんにかかれば大天使も形無しだね。
大天使ラファエル。

「ラファ」で「癒す」、「エル」が「神」

その名は「神は癒す」を意味する。

古代エジプトに遡れば、Ra-Fa-Elに分解される。

Raは太陽、Faは振動、Elは神を表すらしいよ。

ラファエル相手に魔王アスモデウスでは、歯が立たないでしょうね。

せいぜい、どのように料理するかを見物させていただくわ。

トビトはかつてメディアに住むガバエルにお金を預けていた。

彼は息子トビアを呼び、そのことを告げ、証文を持たせた。

すべてトビアに譲渡するためであった。

この時トビトはトビアに様々なアドバイスを与える。

旧約聖書における初めての「黄金律」が示された場面でもある。

例えば「自身が嫌うことを人にしてはいけない」みたいなね。

己所不欲。勿施於人。(jǐ suǒ bù yù,wù shī yú rén)

己の欲せざる所は人に施すこと勿れ。

孔子の『論語』に通じるところですわね。

そして色々と語った後、最後に誰か信頼できる人を探せと言う。

トビアはメディアに行ったことが無いから道案内がいるというわけだ。

トビアはラファエルに出会った。

ラファエルが神の使いであるとは知らなかった。

トビアはラファエルに道案内を頼み、名を尋ねた。

ラファエルはこう答えた。

「わたしは偉大なハナニアの子、アザリアです」

偽名やないか。

悪い子やで。

ハナニアは「神の恵み」、アザリアは「神の助け」という意味だね。
トビアとラファエル、一匹の犬が出発した。

彼らは足を洗うためにチグリス川に下りた。

するとその時、大きな魚が飛び出してトビアの足に噛み付こうとした。

ギュスターヴ・ドレの挿絵ですわね。

あのラファエルの小憎たらしい顔つきったら、まあ。

この魚が非常に重要なアイテムになる。

ラファエルが言うには、魚の心臓と肝臓を燻すことで悪霊を追い払える。

また、胆のうを白い膜の出来た目に塗れば、目を治癒できると言う。

胆のう塗って目の治療とか、ほんまなん?
厚生労働省によれば「コイ科魚類の胆のうは、滋養強壮、眼精疲労の回復、咳止めなどの効果があるとして、中国、日本などのアジア地域で民間薬として古くから服用されてい」たらしいよ。

しかし服用による中毒患者が出ていて、決して身体に良いものではない。

そんなものを目に塗るなんて、阿呆かしら。
現代において否定されるものでも当時は最先端医療だったのかもしれないね。

秦の始皇帝は不老不死を求め、水銀などを原料にした丸薬(辰砂)を飲んだと言う。

今では考えられないような発想を抱いた人はいたということさ。

トビアとラファエルはメディアに到着した。

そこでラファエルはトビアに、彼自身の親族でもあるサラを娶るよう言った。

しかしトビアは悪霊のことを聞き及んでおり、死を恐れた。

ラファエルは魚の肝臓と心臓によって悪霊を追い払えると言ってトビアを勇気付けた。

モーセの律法の定めに従い、トビアとサラは結婚した。

寝室に入り、トビアは魚の肝臓と心臓を香の上に載せた。

悪魔アスモデウスは魚の臭いで追い出され、エジプトの果てへ逃げ去った。

ラファエルが追いかけ悪魔を縛り、ただちに帰ってきた。

ララちゃん大活躍やん。
勝てるとは思いませんでしたが。

よもや遠く離れたエジプトまで逃げた上に、追い詰められるとは。

なんと見苦しいこと。

トビアは当初の目的であるお金をガバエルから受け取った。

そしてサラを妻にし、サラの父ラグエルの財産半分を譲り受けた。

そしてラファエルはトビアに、魚の胆のうをトビトの目に塗るよう助言する。

トビアがそれに従うと、トビトの目に光が戻ってきた。

大団円やな。

ほんま良かった。

ラファエルはトビトとトビアに己の身分を明かした。

「わたしは栄えある主の前に立つ」

「七人の聖なる使いのひとり、ラファエルです」

トビトとトビアは動転し、地面にひれ伏した。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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