8.学問の優位

エピソード文字数 1,155文字

『シラ書』第38章24節から第39章11節では学ぶことの尊さを語っている。

昼夜問わずの力仕事を行うのではなく、学問においてこそ名を永遠とする。

様々な仕事と相対化して、律法学者を褒め称える構造になっている。

例えば次のように、農業に従事する者は知恵を持つ暇が無いと言う。
どうして知恵ある者になれようか。

鋤(すき)を握り、突き棒を扱うことだけを誇り、

牛を追い、その仕事に専念し、若い雄牛のことだけを語る者が。

突き棒は確か、牛さんをコントロールするための棒やったな。

進ませたい方向に突っついて行かせるやつや。

そのような仕事に就けば知恵を得ることも難しい、と。

おそらくその通りなのでしょう。

古き時代において、学問を身につける余暇は得難いもの。

これに反し、心を傾けていと高き方の律法を深く考える人がいる。

この人は、昔のありとあらゆる人々の知恵を探る。

「これに反し」と言って、農業や様々な職人と律法学者は異なると言う。

他には印章の職人、鍛冶屋、陶工なんかが例とされている。

古代ギリシアのソクラテスは職人にそれぞれの知恵を認めたけどね。

彼の父親ソプロニスコスは石工でもある。

そうした態度に比べて、ずいぶんと横柄な印象を受けるよ。

確かになあ。

職人さんらがおらんかったら、生活回らへんで。

一応、そのあたりについても言及している。
彼ら(職人たち)なしには、町は成り立たず、そこに住む人も歩く人もいない。

しかし、彼らは、民の会議に出席を求められず、法律や格言に通じることもない。

職人たちの働きを認めてはいるのね。

とは言え、一段低く見ている印象は否めませんわ。

実はこのような言い回しはベン・シラのオリジナルではない。

古代エジプトの子弟教育が起源とされているんだ。

紀元前2025年から紀元前1700年の間頃に書かれたと言う。

取引の風刺(The Satire of the Trades)と呼ばれる石碑だ。

またの名をドゥア・ケティの教え(The Instruction of Dua-Kheti)

ドゥア・ケティなる人物が息子のペピ(Pepi)に教えを与えるという内容さ。
なんて書いてあるん?
書かれた職業は『シラ書』よりも多い。

大工、石工、金細工師、銅細工師、理容師、れんが職人、等々。

そういった仕事は昼夜を問わず酷使され、悲惨なものだと語る。

しかし書記の能力を身につければ、より良い人生が得られる。

だからしっかり勉強しろ、という感じかな。

職業差別とでも怒られそうな話ですこと。

しかし、当時、その場所におけるリアルが感じられもしますわね。

今と違って時間的余裕も無さそうやしな。

芸術家とかの地位もさほど高くあらへん。

まさしく。

過去には過去の、現代には現代の事情というものがございます。

「事情」とは複合的で、十把一絡げに出来るものではありません。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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