2.最も愛された女

エピソード文字数 1,518文字

Chapter4


25) ペトロが彼に言った。「あなたは私たちに全てを説明して下さいました。もう一つ教えてください。世界の罪とはいったい何でしょうか」

26) 救世主が言った。「罪など無い。しかし、姦淫のごとき行為に及ぶ時、罪を作る。それこそが罪と呼ばれるものなのだ」

27) それゆえに善はあなたの内、全ての本性に来たのだ。その根源へと引き戻すために。


25) Peter said to him, Since you have explained everything to us, tell us this also: What is the sin of the world?

26) The Savior said There is no sin, but it is you who make sin when you do the things that are like the nature of adultery, which is called sin.

27) That is why the Good came into your midst, to the essence of every nature in order to restore it to its root.


(the Gnostic Society Library)

これはイエスが死に、復活した後の場面だ。

弟子たちの前でイエスが問答を行っている。

「罪」といったものが実際に存在しているのではない。

それは各々の行為において作られ、そこに現れてくる。

分かる話ですわ。

姦淫という物質的な悪に対し、霊的な世界が善と置かれている。

このような対比を「二元論」と言う。

確か、グノーシス主義やと偽の神様がおるんやったな。

そんで偽の神が創造した世界が『創世記』以降の世界になっとる。

この世が悲惨なのは現在の宇宙が「悪の宇宙」と言うのさ。

偽神デミウルゴスによって造られた不完全な世界なんだよ。

この世は「善の宇宙」に反する「悪の宇宙」である。

グノーシス主義的宇宙論(Gnostic cosmology)と呼ばれるものだ。

日本だと二元論を足して反宇宙的二元論(anti-cosmic dualism)の方が通りが良い。

物質的なものすなわち悪。

となれば善は決して目に見えるものではないと言うのかしら。

そういうことになる。

続けてイエスは「人の子はあなたがたの内にある」と告げる。

神は外ではなく、自分たちの内側、霊的な世界にいる。

こうしたことをイエスが語り、やがて去っていった。

残された弟子たちは途方に暮れてしまう。

異邦人への宣教など、どうやってすれば良いのかとね。

頼りない連中ですこと。
頼りない弟子たちとは対照的なのがマリアだ。

彼女は立ち上がり、他の弟子たちを叱咤激励した。

そんなマリアにペトロが問いかけた。

Chapter 5


5) ペトロがマリアに言った。「姉妹よ。我らは救世主があなたを他のどの女よりも愛したことを知っている。

6) 教えてくれ。あなたが知っていて覚えているが、我らが知らない、聞いていない救世主の言葉を。


5) Peter said to Mary, Sister we know that the Savior loved you more than the rest of woman.

6) Tell us the words of the Savior which you remember which you know, but we do not, nor have we heard them.


(the Gnostic Society Library)

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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