2.洗礼者ヨハネの母エリサベト

文字数 1,091文字

ユダヤの王ヘロデの時代、アビヤの組にザカリアという祭司がいた。

彼の妻はアロンの子孫で、その名はエリサベトといった。

二人とも、主のすべての掟と定めを落ち度なく行い、神の前に正しい人だった。

しかし、彼らには子がなかった。

エリサベトが不妊だったためで、それに二人とも年老いていた。

『ルカによる福音書』は序文を除き、ザカリアとエリサベト夫婦の話で始まる。

彼らは洗礼者ヨハネの両親となる。

子がおらず、すでに年老いていたという。

年老いていたと言っても幅がありましてよ。

具体的にはどの程度の年齢だったのかしら。

想像に想像を重ねることになるけれど、40歳前後だったと思う。

出産の可能性は著しく下がるけれど、全く不可能ということでもない。

聖母マリアがイエスを産んだのは15歳頃だったと言われている。

これは単にユダヤ人がそれくらいの頃に結婚していたという慣習によるね。

さほど無茶な推測でもないだろう。

そして聖書においてエリサベトはマリアの親戚または従姉だとされている。
従姉ならもうちょっとマリアに年齢近い気ぃするけど。

なんでそんなに年齢離れとるんや?

マリアの母親もまた老齢となってから子供を授かったからさ。

母親の名前はアンナ。

その姉妹ソベの娘がエリサベトだと言われている。

つまり、アンナは高齢出産で、ソベはもっと前に子をなした。

ゆえにエリサベトはマリアの従姉であっても年齢差があった。

エリサベトはマリアの従姉ではなく叔母だという説もあるけどね。

そのへんは深入りせず、話を追っていこう。

子を授かることが出来ずにザカリアは神に祈った。

すると天使ガブリエルが現れて「エリサベトは男の子を産む」と告げた。

ガブりん、大忙しやんか。
しかしザカリアはすぐには信じられなかった。

ガブリエルはその罰として、男の子の誕生まで、ザカリアの口をきけなくした。

ガブりん、そういうとこあるな。

つい怒ってしもたんやろ。

実はこの口をきけなくしたことに対する解釈がイスラムでは異なる。

聖書ではザカリアの不信を咎めるのに対し、『コーラン』では「神の徴」とされる。

『コーラン』第19章(マリアの章)10節

彼は言った、「主よ、私にみしるしを与えたまえ」。主は言いたもうた、「おまえへのしるしとして。三日のあいだ、おまえは身体健全でありながら、人々と話すことができなくなるであろう」

些細ではありますが、このような視点の違いは興味深いですわね。
しばらくたって、妻エリサベトは身籠り、五か月の間引き籠った。

そして、彼女は言った、

「これこそ、主の業(わざ)です。主はわたしを顧みて、

人々の間でわたしの恥となっていたことを、取り除いてくださいました」。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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