6.律法学者

文字数 1,138文字

律法学者とはどういう人たちだったかを改めて見直そう。

彼らは現代のユダヤ社会にもいて、「ラビ」と呼ばれている。

1世紀から6世紀にかけてタルムードの編纂、執筆に貢献した学者たちだ。

ユダヤ教における宗教的指導者、ということかしら。
事情は少々複雑だ。

ユダヤ教における宗教的指導者と言えば祭司(コーヘン)がそれにあたる。

ただ、祭司という役割については廃れていくことになる。

エルサレムの滅びと共に、大祭司の職は消滅し、祭司の役割も非常に限定的となった。

そんで今はラビが主流になってるってことやな。

イエス様とは対立してまうけど、グループのリーダー的存在やったわけや。

確かに律法学者と言えばイエスと対立したという文脈で語られる。

けれど全員が一致してイエスを敵視したわけじゃない。

「ラビ」と呼ばれ始めた最初期の人物、ラビ・ガマリエル1世もその一人だ。

『使徒言行録』第5章33-35節

さて、これを聞いた議員たちは怒りに燃えて、使徒たちを殺そうと考えた。

ところが、民全体に尊敬されている律法の教師で、

ガマリエルというファリサイ派の人が会議場で立ち上がり、

使徒たちをしばらく外に出すように命じた。

それから議員たちに向かって言った、

「イスラエルの諸君、あの者たちの取り扱いは、慎重にしていただきたい。

『使徒言行録』にはイエスの死後、初期キリスト教の様子が書かれている。

その中でもやはり律法学者たちとは対立していたんだね。

けれどガマリエルは穏健派で、キリスト教に対して寛容な態度を示した。

あら惜しい。

強硬な態度を示せていれば、キリスト教など潰えたかもしれませんわね。

さすがにそこまでではないんじゃないかな。

とは言え、ガマリエルはキリスト教正教会においては聖人として崇められている。

律法学者でも聖人認定されるんやな。
とは言え、福音書で描かれる律法学者たちはイエスの敵対者だ。

イエスはエルサレム入城後、「律法学者に気を付けなさい」と言う。

イエスは教えの中でこう仰せになった、

「律法学者に気をつけなさい。彼らは長い衣をまとって歩き回ること、

広場で挨拶されること、また会堂の上席や、宴会の上座に座ることを好む。

また、やもめの家を食いつぶし、見せかけの長い祈りをする。

この人たちは、それだけきびしい裁きを受けるであろう」。

耳の痛い宗教関係者は多いのではなくて?
それ以上はいけないよビヨンデッタ。

ここで語られる律法学者は、宗教を食い物にしている連中という印象だね。

権威主義的で、古代ギリシアのソフィストのようでもある。

ガマリエルの他には、彼の子シメオン。

ヨアナン・ベン・ザッカイといった名がラビとして連なる。

彼らは皆、サンヘドリン、すなわち最高法院のメンバーだった。

そのサンヘドリンこそはイエスの逮捕を行った組織さ。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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