8.プリム祭

エピソード文字数 1,077文字

ハマンを告発し、彼を磔刑に処すことでユダヤ人たちは救われた。

撲滅の勅令についても、それを打ち消す勅令が発行されたんだ。

その中でハマンは「マケドニア人」だと表現されている。

後世、アレクサンドロス大王によってペルシア帝国は征服される。

それゆえ『エステル記』筆者の時代において、ペルシア人が最も憎むべき名となった。

(フランシスコ会聖書研究所 訳注より)

みんな大好きイスカンダルも、ペルシア人にとったら仇敵やからな。
1枚目の図が2018年現代の地図。

2枚目が紀元前336年の頃の地図だね。

ここからアレクサンドロス大王の東征が始まる。

小アジア(すぐ近くのペルシア領)、エジプトを征服し、ペルシア王国を滅亡させる。

さらにはインドにまで遠征の軍を進めた。

まさに「征服王」

イスラエルなどは単なる通り道に過ぎませんわね。

そしてこれがマケドニアの最大版図。
アッシリア、新バビロニア、ペルシアの流れもおしまいか。

栄枯盛衰を感じるわ。

まあ、その話はまだ先のこと。

『エステル記』はペルシアが幅を利かす時代さ。

その中でユダヤ人たちは他民族との勢力争いを行った。

勢力争い?

ハマンを殺し、勅令を取り下げてハッピーエンドではなくて?

王の勅令をもってユダヤ人は自分たちの敵を殺した。

ハマンの息子たちを筆頭に、ユダヤ人に敵対する人たちを殺したと言う。

敵はハマン一人やなかったんやな。

他にどんくらい殺したんや?

その数なんと、75,000人。

七十人訳聖書では15,000人とされているけどね。

どっちにしても、ちょっとした戦争だよ、これは。

それはさすがに、ハマン一人がどうこういう話を超えとるな。
権力争いと、家臣同士の戦いを物語に擬した……。

そのような印象を受けますわね。

この敵への勝利を祝って現代でも行われる祭りがプリム。

語源はペルシア語で「くじ」を意味する「プル」だそうだ。

ハマンがユダヤ人撲滅の月を決める時にくじ引きをしたことから来ているね。

祭りか。

どないなことするんや?

・飲み物や食べ物を贈り合う。

・貧しい人に恵みを与える。

・祝いの食事をする。

・主にシナゴーグで『エステル記』の朗読を行う。

・アル・ハーニシム(Al HaNissim)と呼ばれる追加の朗読を行う。

とまあ、こんなところかな。

プリム祭は堅苦しいものではない。

現代ではコスプレパーティみたいなこともやっているみたいだ。

これは2015年、AFP通信による写真だよ。

場所はイスラエルのシナゴーグ。

ライオンの格好をした子供が『エステル記』を朗読しているところだ。

自由やな。

隣のおっさん、ため息とかついてそうやけど。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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