6.アメリカ大統領就任演説

エピソード文字数 1,519文字

ドナルド・ジョン・トランプは2017年1月20日、アメリカ合衆国大統領に就任した。

その際に行った大統領就任演説で『詩編』第133編を引用した。

その時の内容がこれだ。

兄弟たちがいっしょに仲良く暮らすことは、

なんと楽しく、なんとすばらしいことでしょう。


(以下はトランプ大統領の発言)

The Bible tells us, “how good and pleasant it is when God’s people live together in unity.”

みんな仲良うしたらええ。

ほんま、その通りやで。

日本語と英語ではニュアンスに違いがありますわね。

God's peopleでは「兄弟たち」と言うよりも「神の民」かしら。

究極的には同じことかもしれないね。

この引用をトリニティ・カレッジのマーク・R・シルク教授は称賛している。

(ワシントンポスト「Donald Trump’s inaugural speech may be his most religious yet」を参照)

『詩編』第133編における以下を見てほしい。

仲良く暮らすことは、頭に注がれた香り高い油のように尊いことです。

アロンに注がれた香油はひげに流れ落ち、服のえりにまでしたたりました。

アロンて久しぶりに聞く名前やな。

モーセのお兄ちゃんやん。

なるほど。

要するにトランプは自らをアロンと重ね合わせた表現をした、と。

その教授とやらは考えているということかしら。

そういうことさ。

演説そのものには「アロン」の下りは出てこない。

冒頭のみを語り仄めかす程度だ。

だとすると、思いのほか教養の深い人物に思えるよね。

当人が書いたものなのかしら?
就任演説の3週間より前に自分で書いた、と彼は言っているね。
大統領就任演説において、必ずしも聖書が引用されるわけじゃない。

けれど、そうした人たちでも少なからず聖書の影響を示す場面がある。

それは就任演説の際に聖書を開き、そこに手を置く姿から見られる。

上の画像は1997年ビル・クリントン2度目の就任式の場面だ。

聖書を開いてそこに手を置いているのが見えるだろう?

ここで開かれているのは『イザヤ書』第58章12節。

その箇所をちょっと見てみようか。

息子たちは、長い間人の住んでいなかった

町々の廃墟を建て直し、「城壁と町を造り直す恩人」と呼ばれます。

経済の立て直しするでって意気込みやろか。
また、政治学者でもあるトーマス・ウッドロウ・ウィルソン。

彼は2期連続で大統領となり、どちらの演説でも『詩編』に手を置いている。

2期目、1917年の就任演説では『詩編』第46編を開いていた。

神は私たちの隠れ家、また力、

苦難にあえぐときの確かな助けです。

ウィルソン言うたら、第1次世界大戦後のパリ講和会議を主催したんで有名やな。

国際連合の前身、国際連盟の創設にも尽力した言うて、ノーベル平和賞をもろうとる。

まあ、当のアメリカ合衆国が参加できへんかったんは無念やろけど。

『詩編』第46編の後半は世界平和を求める言葉が続いている。

第1次世界大戦への参戦はウィルソンの決断だけれど、

それは「戦争を終わらせるための戦争」だと言うわけだ。

(『詩編』第46編より)

さあ、主がどんなにすばらしいことをなさるか、よく見なさい。

主は全世界を灰とし、世界のすみずみまで戦争をやめさせ、

武器という武器を残らず破壊し、焼き捨てられます。

イマヌエル・カントの『永遠平和のために』のようね。

第3条項、常備軍は、時とともに全廃されなければならない。

そのカントの著作こそ、国際連盟創設に大きな影響を及ぼしたとされる。

そしてカントやウィルソンの思想的起源が『詩編』第46編にある。

そんな風に僕は思うよ。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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