10.ダビデとゴリアテ

文字数 1,213文字

ペリシテ人は戦いのために軍を集結させた。

イスラエル人もまた抗戦のために戦列を敷いた。

ペリシテ人の陣営からゴリアテという名の屈強な戦士が現れた。

彼は一騎打ちを申し出たが、イスラエル人たちは恐れおののいた。

ゴリアテってあれやん。

『天空の城ラピュタ』に出てきた飛行戦艦。

その名の由来が彼、ペリシテ人の戦士ゴリアテなのさ。
身長がおよそ2メートルあり、数十キログラムの鎧を身にまとい。

そして7キログラム近い鉄の槍を振り回す大男だという。

そんなのが出てきて一騎打ちとか言われても困るよね。

僕なら遠くから矢で殺すかな。

そうね。

わたくしなら、岩でも放り投げておくところかしら。

むさくるしい男は好みではありませんの。
その頃ダビデは父の羊を世話するため、実家と宮廷を行き来していた。

ゴリアテは四十日にわたり、朝夕出てきては挑発を繰り返した。

ダビデはサウルに会って、自分が戦うと述べた。

サウルは若輩のダビデには無理だと言ったが、ダビデはこのように返した。

「獅子や熊が羊を奪ったとき、それを殺して羊を救い出したことがあります」

彼は主の助けにより獅子や熊の爪から逃れ、それを撃退したと言った。

獅子や熊にも負けないと主張し、ダビデはサウルの許しを得た。

そしてサウルはダビデに鎧兜と剣を与えたんだ。

だけどダビデはそれらを「慣れていない」と言って脱ぎ捨てた。

彼は自分の杖と五つの石を持って、ゴリアテに立ち向かう。

身の丈にあわん武器やのうて、使い慣れたもんで対処する。

大事なことやな。

ダビデは若く、美しかった。

それゆえゴリアテは彼を甘く見た。

ダビデは石投げでゴリアテの眉間を撃ち倒した。

そしてゴリアテの剣によってその首をはねた。

その美貌を武器とした例で言えば、記紀神話のヤマトタケルが有名だね。

彼の場合は敵のクマソタケルを油断させるため、女装して近づいて殺した。

古事記にはクマソタケルが「見感其孃子(そのおみなにかなひ)」とある。

なかなかの美少女ぶりだったろうね。

勝つために、あらゆるものを武器にする。

当然のことですわ。

どうやって勝つかは先々に影響もあるし。

なんでもかんでも許されるわけちゃうけどな。

とは言え、この対決は圧倒的不利に見える状態からの逆転劇。

油断とか飛び道具とか、そんなん吹っ飛ぶくらいのシチュエーションやろ。

この場面をベースに、欧米では「ダビデとゴリアテ」が慣用句になっている。

その意味は大番狂わせ。

ゴリアテを「かませ犬」とみなした表現だよ。

スポーツで金星のことをジャイアント・キリングと言うだろう?

ダビデとゴリアテの物語はその言葉の由来とも言えるんだ。

直接的には『ジャック・ザ・ジャイアント・キラー』という童話が影響しているのでしょうけれどね。
ゴリアテを倒したことでイスラエル軍は勢いづいた。

ペリシテ人に勝利し、敵の陣営を略奪する。

そしてダビデはゴリアテの首をエルサレムに持ち帰った。
ダビデは勝利への貢献度がダントツやな。

出世待ったなしやで。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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