4.不倫は命を危機にさらす

エピソード文字数 1,192文字

知れたこと。

不倫には死を。

『申命記』第22章22節にも記されていますわね。

イスラエルのうちから悪は取り除かなければなりません。

こういうのは繰り返し語らないとね。

とても大事なことだから。

『箴言』第6章20-35節において「姦通に関する注意」が書かれている。

要するに、お前浮気して他の女に手ぇ出すなよって話だ。

我が子よ、父の命を守り、母の教えをなおざりにするな。

それらをいつも心に結び、首に巻け。

首に巻け?

ネギかな?

ネギには硫化アリルという成分が含まれていて、アリシンになる。

それを吸い込むことで血行を良くしているのかもって言われてるね。

まあ、料理して食べた方が早いんだけどさ。

ここで首に巻けと言っているのはもちろんネギじゃない。

父と母の言うことを首飾りのように肌身離さずにいておくようという意味だ。

それはお前を見知らぬ女の滑らかな舌から守る。

彼女の美しさに心を燃やすな。

滑らかな舌だなんて。

艶めかしい表現ですわね。

お父さんとお母さんの言いつけを守って、女の誘惑に乗るなっちゅうことやな。
年ごろの男の子にはいっちゃん難しいことやで、これは。
言葉通りの意味もあるとは思うけどね。

ここではたぶん父を神、母を知恵と読むのが妥当かな。

そして見知らぬ女は異教でもある。

口うるさい老人の神と、すべてを受け入れる若き女神。

どちらを拝みたがるかなんて、聞くまでもないことですわね。

『箴言』が残っているということが、まさにそれを事実だと示しているわけだ。

皆がまっすぐ、唯一神だけを拝んでいればいちいち文句を書き連ねることもない。

娼婦の値段はひとかけらのパンで済む。

姦婦は尊い生命を刈り取ろうとする。

娼婦を金で買う程度は許しましょう。

しかし自分の夫以外の男に抱かれる女、姦婦は大罪でしてよ。

娼婦でもあかんとこはあかんやろけどな。

ご家庭によりけりやから、よう話し合っといてほしいとこやで。

人は懐に火を隠し、その服を燃やさずにいられるだろうか。

それゆえ、隣人の妻に触れる者も無実ではいられない。

火のたとえ話なんかは「ことわざ」っぽいよね。

この後の下りを簡単に説明しよう。

もし盗みを働いて捕まったら、その「七倍」を返さなければいけないと言う。

泥棒なんかすれば全財産を失いかねないという戒めだ。

七倍か……。

なんぼ盗んだかによるけれど、手痛い出費になりそうやな。

ここの「七倍」というのは慣用表現だと思われる。

律法の書には書かれていないからね。

日本で数の多いものに「八」を使いたがるようなもんじゃないかな。

八百屋とか、八百万の神とか言うでしょ?

そんな目に遭う窃盗に比べても姦通はひどい。

なんせいくら賠償しようとも、婦人の夫は容赦なく怒る。

どんな贈り物にも目もくれず、復讐を果たすと言う。

そんな状況に陥りたくなければ、神と知恵に従いなさい。

もしくは女を連れてさっさと逃げることね。

それで生きていけるのであれば大したものよ。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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