4.エリシャの奇跡

エピソード文字数 1,427文字

預言者のエリシャはエリヤ同様……。

いや、それ以上に多くの奇跡を起こしていく。

エリコの町で行った水源の浄化はその一つに過ぎない。

例えばシュネム人の裕福な夫人に起こした奇跡がある。

その夫人は裕福ではあっても、夫は年を取って子を授かることがなかった。

そこでエリシャは彼女に男の子を授かるという預言を与えた。

すると1年後にその通りになったんだ。

子は神の授かりもんやからな。

預言者に口添えしてもろたら一発やで。

しかし子供がある程度成長すると、突然の頭痛を訴えて死んでしまう。
くも膜下出血、とかやろか。

せっかく授かった子宝やのに、かわいそうやな。

これは奇跡の物語だよ?

生き返るに決まっているじゃないか。

エリヤが起こした奇跡にそっくりね。

あの時は栄養失調の子を生き返らせましたわ。

エリシャが主に祈ると、子供は7回くしゃみをして目を開く。

この絵はまさに子供が目を開いた直後だ。

母親の喜ぶ顔が見えるね。

ちなみに描いたのはベンジャミン・ウエスト。

イギリス領ペンシルバニア植民地生まれの歴史画家だよ。

イギリス領ペンシルバニア植民地?

どこやそれ。

アメリカ、ペンシルバニア州のことですわ、お姉さま。

位置はニューヨーク州の真下にありましてよ。

この他の奇跡も見てみよう。

ナアマンという、アラム軍の司令官に起きた奇跡がある。

せやけど、アラムはイスラエルとは敵対関係やったやろ?

唯一の神様を信仰しとる国でもないし。

そもそもイスラエル王ヨラムだって神を正しく信仰しているわけじゃない。

アハブほど熱心ではなくとも、異教の神を崇めてたろうさ。

アラム王の軍司令官ナアマンは重い皮膚病を患っていた。

サマリアの預言者エリシャならば治せるという噂を聞き、

王の許しを得てエリシャを訪ねることにした。

アラムの王はイスラエルの王にその旨手紙を書いた。

イスラエル王ヨラムは、言いがかりをつけるための策だと考えた。

それゆえ衣を引き裂くほどに怒り拒絶しようとしたが、エリシャがそれを咎めた。

分からんでもない。

仮にエリシャが奇跡を起こせへんかったら、イスラエルの面目が立たへん。

王ヨラムはそれを警戒したんだね。

でもエリシャは気にせずナアマンに会わせろと言ったんだ。

エリシャはナアマンにヨルダン川で7回身を清めよと言った。

ナアマンはもっと分かりやすい奇跡を期待したが、渋々言う通りにした。

すると彼の身体は元通り綺麗になった。

また7回か。

好きやなあ、その数字。

ナアマンはエリシャに大いに感謝した。

彼の心は完全に主に靡いていた。

しかし彼はアラムの軍人だ。

彼の王に従って、主以外の神に礼拝しなければならない。

ナアマンはエリシャにそのことを告げて許しを請うた。

そんで、エリシャは何て言うたんや?
安心して行きなさい。

形式的な礼拝を行ったとしても、内心の信仰が保たれていれば良いということだね。

オランダ黄金時代の画家、ピーター・デ・グレバー。

フランス・ピーター・デ・グレバーの長男。

真ん中の男はナアマンで、お礼の贈り物をしたいと言っている場面だね。

そんで右がエリシャか。

きちんとはげとるな。

そしてたぶんだけれど、一番右にいるのはエリシャの従者ゲハジ。

彼はエリシャが贈り物を断ったのを見て、もったいないと思った。

そして後からこっそりナアマンに金銭を要求したんだ。

はしたない。
その行為はエリシャにばれた。

そしてゲハジとその子孫は重い皮膚病にかかり続けるという呪いにかかってしまう。

自分の従者にも変わらず厳しく接する。

まあ、公平やわな。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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