3.アフロディーテ

エピソード文字数 1,145文字

アフロディーテはギリシア神話における、愛と美と性の女神。

ローマ神話ではウェヌス(ヴィーナス)と呼ばれますわね。

メソポタミア神話のイシュタルと起源を同じくするとも言われています。

コリントという町はちょっと特殊でね。

特に紀元前5世紀頃はアフロディーテ神殿での「商売」が盛んだった。

商売?

何か特産品でもあったんか?

人を商品と言えるなら、まあ特産品だろう。

そこでは神殿娼婦(ヘタイラ)がいて、売春によって儲けていたらしい。

歴史家ストラボンの記述によれば、1000人以上の神殿娼婦がいたらしい。

それによりとても豊かであったとも言う。

手っ取り早く稼ぐ手段ですものね。

しかし、それにばかり頼っていては他の産業が発展しないのではないかしら。

安易に手にした金は失うのもあっという間でしてよ。

そのへん詳しく知りたいところだね。

そもそも、神殿娼婦自体が歴史編集上の神話だという説もある。

実在したとして、当時のアフロディーテ神殿は共和制ローマに破壊されている。

19世紀フランスの画家、トニ・ロベール=フルーリーの作「コリント最後の日」。

紀元前146年におけるコリントの戦いを描いたものだ。

武装したアフロディーテ像の周囲に、神殿娼婦たちの嘆き悲しむ姿が見えるね。

コリントを攻め落としたのはルキウス・ムンミウスという軍人だ。

彼はコリントの男たちを皆殺しにし、女子供は奴隷にしたと言う。

可哀そうやけど、戦争の常やからな。
その後、コリント再建においてはローマ人、ギリシア人、ユダヤ人が集まっていた。

そしてコリント自体は君主崇拝の地となっている。

さて、『コリントの人々への第一の手紙』に戻ろうか。

時代はだいたい西暦50年くらいだ。

みだらな行いを避けなさい。

人が犯す罪はすべて体の外にあるものですが、

みだらな行いをする者は、自分の体に対して罪を犯すのです。

あらあら。

とても宗教的なお言葉ですこと。

コリントは神殿娼婦が盛んだったと言われるような町だった。

真偽はさて置き、人が大勢集まる地域だったことは間違いない。

ローマ支配下のコリントも商業が盛んな町となっていたことだろう。

そしてそういう場所には何かといかがわしいものも付き物だ。

そら、金の集まるとこやからな。

神殿娼婦やのうて、普通の娼婦がぎょうさん集まってくるやろ。

パウロさんも頭悩ませたやろな。

誘惑に満ち溢れた場所できちんと信仰を守らせるんは難儀やで。

パウロは信徒たちに「あなた方はもはや自分自身のものではない」と言う。

神から受けた聖霊を宿した体だから、自分の好き勝手にしてはいけないのさ。

だから「体を神殿として神を称えなさい」と言って、罪に交わらぬよう注意したんだ。

手紙程度でどうにかなるものかしらね。
2000年も語り継がれる手紙さ。

それなりの効果はあったんじゃないかな。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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