7.宰相リシアスと3人の部下たち

文字数 1,042文字

セレウコス朝シリアの宰相リシアスは3人の人物を選んだ。

プトレマイオス、ニカノル、そしてゴルギアスである。

プトレマイオスにはあだ名があり、マクロンと呼ばれる。

3人の中では比較的、ユダヤ人に対して融和的に振舞ったとされる。

ニカノルはパトロクスの子とされる。

パトロクスは「王のおもだった友人の一人」だそうだ。

そして歴戦の勇士ゴルギアス。

彼は聖書の中で「呪われた男」と言われるほど、ユダヤ人にとって憎い存在だった。

「呪われた男」とかむしろ強敵感あるな。

名前もかっこええし。

プトレマイオスと言えばエジプトのファラオ。

ゴルギアスと言えばギリシアの哲学者。

そのあたりが有名ですが、なんとも大層な名前ですこと。

ニカノルはギリシア語で「勝者」を意味する。

おそらく勝利の女神ニケーが由来になっているのだろうね。

つまりマカバイは王と哲学者、勝利の女神を相手に戦うわけか。

単なるこじつけやけど、そう考えてみるのも面白いかもしれへんな。

プトレマイオスらの率いるシリア軍はアマウスに陣を敷いた。

商人たちはイスラエルの民を奴隷として買うために陣営にやって来た。

マタティアが住んでたモデインと目と鼻の先やな。

徒歩で、だいたい2時間もかからんくらいか。

ユダ・マカバイたちは山に隠れてゲリラ戦を行っていた。

とは言っても、モデインとは何らかの繋がりがあったのだと思う。

シリア軍がアマウスに陣を敷いたのもそういう見込みがあったんじゃないかな。

シリア軍を追い払うため、ユダたちはまずエルサレム近くのミツパに行った。

ここは神聖な場所で、勝利のための祈りを捧げに来たんだ。

その後、ユダはアマウスの南に陣を敷いた。
ゴルギアスは夜陰に乗じてユダの陣営に襲いかかろうとした。

しかしそこには誰もいなかった。

「奴ら、我らを恐れて逃げたのだな」

ゴルギアスはそう言って、山地に向かってユダたちを探した。

しかし夜明け間際にユダは平地に現れ、アマウスに残ったシリア軍に襲い掛かった。

ユダは「異邦人」を徹底的に打ち負かした。

やるやないか。

敵の主力と衝突することを避けて、明け方の隙を突いたんやな。

寝ぼけ眼のシリア人たちは慌てふためいたようですわ。

散り散りになって逃げていきました。

身を隠してゴルギアスとの戦いを避けたんだろうね。

ユダの襲撃に気付いた山地のシリア軍はうろたえて逃げ出した。

ユダ・マカバイは勝利し、シリア軍の装備を奪うことに成功した。

セレウコス朝シリアの宰相リシアスは敗北の報を聞いて落胆した。

そして彼自らが軍を率いて討伐に乗り出すのさ。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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