6.老いぼれどもの欲情

エピソード文字数 1,223文字

17世紀イタリアのバロック画家、マッシモ・スタンツィオーネ作。

「スザンナと長老たち」

二人の長老が人妻のスザンナにエロいことしようと言い寄る場面だ。

なんやこいつら。

「長老」言うたら偉い人らちゃうんか。

殺しましょう♪
この長老たちは裁判官として任命された。

バビロン捕囚時代であっても、ユダヤの伝統は続いていたわけだ。

彼らは任命後、ヨアキムという男の家によく通った。

そのヨアキムの妻がスザンナだ。

二人の長老たちはスザンナが夫の庭園を散歩するのを眺めていた。

そしていつしか理性を失い、彼女に欲情を抱き始めた。

二人は互いに自分の悩みを打ち明けることはしなかった。

ある日、一人がもう一方に言った。

「さあ、家に帰ろう。昼食の時間だ」

二人は出ていき別れたが、それぞれ戻ってばったり出会ってしまった。

互いに理由を詰問し、スザンナを見るためであることが知れた。

この時から二人は一緒になってスザンナ一人の時を狙おうと決めた。

一人やと怖いけど、二人なら大胆になれるてか。

まんま小者の発想やな。

そしてスザンナが水浴びを一人でするというチャンスに巡り合った。

二人の長老はスザンナに言い寄った。

もし抵抗すれば「若い男と一緒だった」と証言すると脅しながらね。

男二人がかりで脅迫とは。

こいつらを燃やし尽くして私の生贄といたしましょう。

スザンナは嘆いて言った。

「あなた方の言う通りにすれば、わたしは死ぬしかありません」と。

彼女は大声で助けを呼び、長老たちも対抗して叫び立てた。

結果、スザンナは姦淫の罪に問われることになった。

長老二人はスザンナを死罪にしようとする。

それも自分たちの罪を隠すためだね。

なんちゅう恥知らずな連中や。

年を取っただけのならず者やんけ。

人々がヨアキムのところに集まった時、長老たちはスザンナを呼ぶように言った。

スザンナは両親と子供たち、親類たちと一緒にやって来た。

彼女はベールで顔を覆っていたが、長老たちは取るように命じた。

その美しさを楽しむためであった。

自分が今から殺そうという女の顔でしてよ。

その美しさを楽しもうという発想が外道じみていますわね。

長老たちの証言は無批判に受け入れられた。

スザンナは死刑の判決を受けて嘆く。

そこに現れたのがダニエルだった。

彼は神の「特権」により長老の証言を「偽証」と喝破した。

そして二人を別々に尋問すると言った。

(一人目)

邪悪な日々を重ねてきた老いぼれよ。

お前が以前に犯した罪の報いが今こそ来たのだ。

夫人と若い男はどの木の下で一緒になっていたのか。

長老は「乳香樹の下だ」と答えた。


(二人目)

お前はこのたびのようなことをいつもイスラエルの娘にしていた。

彼女らは恐ろしさのあまり、お前たちの言いなりになった。

夫人と若い男はどの木の下で一緒になっていたのか。

長老は「柏の木の下だ」と答えた。

言うとることがバラバラやな。

ありもせん事実やから当然やわ。

この尋問によりスザンナは無罪放免。

逆に長老たちはモーセの律法に従い死刑となったと言う。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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