9.イクトゥス

エピソード文字数 940文字

イエスはガリラヤ湖のほとりで二人の兄弟をご覧になった。

シモン・ペトロとアンデレ。

この二人は漁師であった。

イエスは仰せになった、

「わたしについて来なさい。あなた方を人を漁(すなど)る漁師にしよう」。

宗教の勧誘ですわね。

なんとも怪しい誘い文句ですこと。

これも実は旧約聖書の表現をベースにしている。

『エレミヤ書』を確認してみようか。

『エレミヤ書』第16章16節

「見よ、わたしは大勢の漁師を遣わして――主の言葉――、

漁師たちが彼らを漁(すなど)る。その後、わたしは大勢の狩人を遣わして、

狩人たちがすべての山、すべての丘、もろもろの岩の割れ目から彼らを狩り出す。

この『エレミヤ書』の言葉は、悪人を狩り出すっちゅう意味やな。

そんな言葉をベースにしてええんか?

構わない。

むしろ悪人であればこそというところじゃないかな。

イエスの教えは新興宗教で、ユダヤにおいては異端だった。

313年のミラノ勅令でローマ帝国に公認されるまでは迫害の危機にある。

そんな彼らは魚の絵を自分たちの隠れシンボルとして用いたらしい。

その名をイクトゥスと言う。

なるほど。

シモン・ペトロとアンデレが漁師ゆえに、このマークに?

そのへんは定かじゃない。

新約聖書にはほかにも魚が登場する場面があるからね。

しかし、彼ら最初の弟子たちを全く意識しないということは考えにくいかな。

ちゅうか313年って紀元後のことやろ?

イエスが生まれて、キリスト教が認められるまで300年かかっとるんか。

できたての宗教など、弾圧されて当たり前。

新たに宗教を作るのであれば、自らの人生は犠牲とせざるを得ません。

ヤコブとヨハネの兄弟が父ゼベタイとともに網を手入れをしていた。

イエスはこの二人に呼びかけ、二人はイエスに従った。

また漁師に声かけとる。
これではイエスこそ、弟子を漁(すなど)る漁師ですわね。
イエスは弟子を持ち、信仰を広め始める。

ガリラヤの地で、天の国の福音を宣べ伝えた。

そして、同時に民の病気を癒やすなどした。

悪霊憑き、てんかん、中風、どんな病気でも癒やしたという。

さすが救世主。

医者も商売あがったりやな。

そうやって、彼は徐々にその勢力を広めていったんだ。
多くの人々がガリラヤ、デカポリス、エルサレム、ユダヤ、

ヨルダンの向こうから来て、イエスに従った。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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