3.シャロンの花

エピソード文字数 1,135文字

(花嫁)

私はシャロンのバラ、谷間のゆり。
一般にシャロン平野の「バラ」と訳される箇所。

ヘブライ語では「חֲבַצֶּלֶת(ハヴァツェレット)」となる。

ヘブライ語は右から読むので注意してね。

「ハヴァツェレット」とは確か水仙のことだったような。

なにゆえ「バラ」としたのかしら。

そもそも「ハヴァツェレット」がどのような花なのかは不明なんだ。

バラ以外にもサフランと訳されることだってある。

あら、そうでしたの?
聖書ではバラやサフランと訳されることが多い。

いわゆる英語の欽定訳聖書でも「I am the rose of Sharon」

つまり「私はシャロンのバラ」と書かれているね。

「rose of Sharon」と言われたらそれは「バラ科」というくらいのことだ。

具体的にどのバラだという風には語られない。

けれどこの「rose of Sharon」を木槿(ムクゲ)だと言う人もいるね。

ムクゲって確か、韓国の国花とかやなかったか?

それがイスラエルに生えとったん?

ムクゲの原産は中国大陸南部とか台湾のあたりだ。

気候的にシャロンの地域で栽培できるかとどうかは正直分からない。

けれどシリアの地域で、観賞用植物として栽培されてはいたらしい。

なんせムクゲの英語名は「Hibiscus syriacus(ヒビスカス シリアカス)」だ。

これは何の地図かしら?
イギリス王立植物園、キューガーデンの資料でね。

ムクゲの分布を表すものだよ。

見ての通り、エジプトや中東の厳しいエリアには根付かない。

うーん。

シャロン平野の「ハヴァツェレット」がムクゲってのは無理がありそうやな。

シャロン地域に住むお金持ちの庭園に咲いてる花やったらワンチャンあるかも。

北米でムクゲのことを「rose of Sharon」と言ったり。

ブラジルでも「rosa de Sharon」と表現したりするらしいけどね。

事実に基づくものというより、慣用的な表現ってとこなんだろう。

さて、結局「シャロンの花」は謎の花というわけだけど。

実は「シャロンの花」とはイエス・キリストのことを指すと言われている。


なんでやろ。

聖書に書かれとるんか?

残念ながら聖書に直接そういう表現はない。

讃美歌で「シャロンの花」とはイエス・キリストのことだけど、後世の作だね。

はてな。

ではどのような繋がりでイエスを「シャロンの花」などと喩えるのかしら。

シャロンの花が薬草として用いられたのではないか、という話がある。

人々を癒すものの代表例としてあったんじゃないかな。

それがそのままイエス・キリストに当てはめられたわけだ。

なるほど。

なんせ、全人類の救世主やからな。

葛根湯みたいなもんやで。

(花婿)

わたしの愛する者が、おとめたちの間にいる。

まるで茨の中にある、百合の花のようだ。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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