15.殺してはならない、だが死刑だ

エピソード文字数 854文字

十戒(じっかい)に続いて契約の法典の話だね。

そこには祭壇の造り方とか、同胞奴隷に関する規定なんかがある。

人が大勢おったら決まりごとが必要やからな。

ハンムラビの教えやで。

聖書にもハンムラビ法典に似た一節が出てくるんだ。

「お前の命には命、目には目、歯には歯、手には手、足には足、火傷には火傷、切り傷には切り傷、打ち傷には打ち傷をもって償わなければならない」

全く同じってわけではないんやろけど、影響はありそうやな。
ところで十戒では「殺してはならない」と言っていたけれど、

法典では色んな罪に対して死刑が適用されている。

だから「殺してはならない」というのは絶対に殺すなというのではない。

正しい理由があれば殺すことも仕方ないという厳しい世界観がある。

以下の者は死刑に処せられる。

・故意に人を打って人を死なせた者

・父または母を打つ者

・人を誘拐した者

・父または母を呪う者

まあ、だいたい妥当なんちゃう?

呪いもガチの時代やしな。

牛が人を突き殺した場合。

もしその牛が以前から突く癖のある牛で、所有者が注意を守らなかったら。

その所有者も殺されなければならない。

えらい細かいな。
法律を見て「細かい」と思ったことは、実際に起きたことだろうね。

間接的な殺人をどう取るかという問題だよ。

女魔術師を生かしておいてはならない。
女魔術師さん、なんか悪いことしたん?
いや、たぶんしてない。

と言うか、聖書に女魔術師は登場しない。

どういう意図があるか、よく分からない。

獣と寝る者は誰であろうと、死刑に処せられる。
ああー。なるほどやな。
何が「なるほど」なの?
よくあっちで「ケモナー」が取り沙汰されるやろ?

死刑になるほど罪深いことやってんな、って。

まあ、無関係というわけではないかもね。

歴史的な背景を背負っているわけだ。

他の神々に生贄を捧げる者は滅ぼし尽くされる。
俺以外の神を拝む奴はぶっ殺す。
安息日に仕事をする者は誰であろうと、死刑に処せられる。
うーん……。
安息日に仕事を“させる”者は誰であろうと、死刑に処せられる。

こっちの方がええんちゃう?

たしかに。
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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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