4.獅子の洞窟

エピソード文字数 994文字

ネブカドネツァルの死後、子のベルシャツァルが王となった。

彼は不敬なことに、宴会の席でエルサレム神殿の金の祭具を用いた。

すると人間の手の指が現れて、壁に文字を書いたんだ。

まあ、見た感じちょっとした心霊現象みたいなもんだね。

そら、いきなり人の指が現れたらびびるやろ。

そんで、壁には何が書いてあったんや?

それがどうもその場にいた人たちには読めない文字だったらしい。

そこでいつものように、ダニエルが解読者として呼ばれた。

ベルシャツァルは解読してくれれば国内第三の位を与えるとまで言う。

『メネ、メネ、テケル、ウ・パルシン』

これが書かれた文字です。


メネ:「数える」の意味。神がベルシャツァルの治世を数え、終わらせた。

テケル:「計る」の意味。ベルシャツァルが秤にかけられ、不足とみなされた。

パルシン:「分ける」の意味。国が分裂しメディア人とペルシア人に与えられる。


ダニエルは金の鎖と第三の位を与えられた。

その夜、ベルシャツァルは殺され、メディア人ダレイオスが王位を継いだ。

以前、「数える」という行為は不吉という話がありましたわね。

数えることは、そのものを終わらせることと思っていたのかしら。

何にせよ、祭具で宴会なんかするもんじゃないね。

ダレイオスと言う名はペルシア語「ダラヤウァフシュ」に由来する。

「善の堅持者」という意味で、基本的にはダニエルを尊重する。

しかし周りの重臣たちはダニエルを疎ましく思っていた。

そこで今後30日間、王以外に願い事をする者を獅子の穴に投げ込む……。

という謎の禁令を策定して王に署名させた。

はあ?

そんなんされたら、ダニエルは神様にお祈りできへんやないか。

その通り。

ダニエルは日課として祈りを捧げている。

現行犯逮捕で獅子の穴行きさ。

王はダニエルにこう言った、

「お前がいつも仕えている神が、どうかお前を救ってくださるように」。

王は眠れぬ夜を過ごした。

ブリトン・リビエラ「王に答えるダニエル」

ブリトンは19世紀末から20世紀初頭イギリスの画家だね。

心配になって声をかけにきた王に答える場面だ。

ライオンたちはダニエルに近づきもしませんわね。

これもまた神の力というわけ。

神の力を信じた王はダニエルを引き上げさせた。

そして陰謀を巡らせた臣下たちを獅子の穴に落とした。

彼らは獅子に骨まで砕かれたとある。

こうしてダニエルは、ダレイオス王とペルシアのキュロス王の治世の間、

繁栄のうちに過ごした。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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