11.偽預言者たち

エピソード文字数 1,319文字

イスラエル王アハブは、アラム人からラモト・ギレアドを奪い返そうと考えた。

そのためユダ王ヨシャファトに助力を願った。

ヨシャファトって誰や。

ユダの王はアサやなかったっけ。

そのアサの息子がヨシャファトだね。

彼は父に劣らず主を厚く信仰した。

イスラエルとユダは仲たがいをしていたのではなくって?
必要とあらば手を組む。

小国家が入り混じった世界では、誰もがずっと仲良しということはない。

663年の白村江の戦いなんか面白いよね。

唐・新羅連合軍と、倭・百済連合軍の戦争だよ。

この時に倭国は大敗し、百済は滅亡してしまった。

倭国は唐が海を越えて攻めてくることまで想定して体勢を整えた。

けれどそうなることはなく、むしろ唐は倭国との関係を良好なものにしていく。

何故なら、今度は新羅が力を付けてきたからさ。

遠交近攻は中華の古典的な手法や。

これに騙されると痛い目に遭うんやで。

欧州情勢ならぬ古代中東情勢は複雑怪奇。

すぐ隣の国だけでなく、北や南の超大国にも要注意だ。

アハブは400人の預言者を集め、アラム人との戦争に勝利するかを尋ねた。

彼らはみな、「主は王の手にこれを渡す」と言った。

ヨシャファトは他に預言者はいないのかと尋ね、預言者ミカヤの名が挙がった。

しかしアハブはミカヤの名を出しながら、彼を呼ぶことを渋る。

ミカヤはアハブにとって良い預言を言わないからだ。

つまり、耳障りな言葉は受け入れたくない、と。

暗君の鏡ですわね。

そういう上司にはイエスマンしかおらんくなる。

400人おった預言者は皆、イエスマンやったんやろな。

アハブは結局、ミカヤを呼ぶ。

するとミカヤは「勝利する」と言った。

なんや。

良かったやん。

というのもこれはただの皮肉でね。

それに気付いたアハブは怒った。

そしてミカヤを牢獄に押し込めたのさ。
イスラエル王アハブとユダ王ヨシャファトはラモト・ギレアドに攻め上った。

アハブは変装し、ヨシャファトは普段通りの服を着た。

アハブがそうするようヨシャファトに頼んだのだ。

なんやそれ。

ユダ王を囮にしようっちゅうことか?

せこいことすんなあ。

アラムの王はイスラエルの王だけを狙って戦うよう命令した。

ヨシャファトは追い詰められ、助けを叫び求めた。

アラムの戦車隊長たちは追うのをやめて引き返した。

追っていたのがイスラエルの王ではなかったと気付いたらしい。

まあ、せっかくだから殺しておけば良いのにと思うけどね。

ある者が何気なく弓を引くと、アハブの鎧のとじ目を射抜いた。
なんと、流れ矢!
流れ矢によって傷を負ったアハブは、出血多量で夕暮れに息絶えた。

勝利どころか王の死という最悪の結末で戦いは終わったんだ。

旱魃で疲弊した国で、周辺諸国と対等にやりあった。

そんな王様にしてはあっけない終わり方やったな。

軍を率いてベン・ハダドを打ち破った。

政治交渉でユダ王ヨシャファトを味方に引き入れた。

かと思えば、嫁さんの尻に敷かれた政治をやる。

アラム人との戦いではこそこそと隠れる。

良い面も悪い面もある。

評価が難しいけれど、まあ人間そんなもんだよねってとこかな。

これとは関係無いところでユダ王ヨシャファトも死ぬ。

イスラエル王はアハズヤに。

ユダ王はヨラムにと代替わりした。

以上で『列王記上』は終わりだよ。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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