4.ユダの王アサ

エピソード文字数 1,527文字

『歴代誌』における王アサは『列王記』よりも詳細に書かれている。

彼は偶像であるアシェラ像を切り倒し、基本的には主に忠実だった。

そのことが評価され、加筆修正されたのかもしれないね。

アシェラの名が唐突に現れましたわね。

いったい誰がそれを建てたと言うのかしら。

『列王記』だとこの時点でアシェラ像を建てたのは二人だね。

一人はレハブアム。

イスラエルの南北分裂直接の原因を作った王だ。

けれど彼は『歴代誌』において、アシェラ像への関与が書かれていない。

とすると残りの一人が直接の首謀者となる。

それはレハブアムの妻マアカ。

彼女はユダ王アサの祖母にあたる。

マアカっちゅうのは何ものなんやろ。

ソロモンみたいな外国人妻とかかな。

マアカの血筋は王家に連なる。

彼女の父(祖父とも言う)はアブサロム。

父である王ダビデに反旗を翻し、返り討ちとなった人だ。

因縁じみとるな。

かつてダビデに敵対したもんの身内が、今度はアサと対立するわけや。

アサはアシェラ像を切り倒し、祖母のマアカを太后(たいこう)の座から退けた。

主に対して忠実で、おかげで戦争にも強かった。

クシュ人ゼラは100万の軍を率いてユダ王国に侵入した。

ユダ王アサは神に祈り、神は応えてクシュ人を打った。

ユダ軍はこれを追撃し、皆殺し、ゲラル周辺の町から略奪を行った。

多くの戦利品と共に彼らはエルサレムへと帰還した。

クシュ人?
エチオピア人、と言われているね。

地理的には現代のエチオピアとは異なってて、エジプトすぐ南辺り。

ただし、ここで言うゼラがいったい何ものなのか。

そこがちょっとした論争の種になっているんだ。

そう言えば、『列王記』にその名は見当たりませんわ。

『歴代誌』において加筆された箇所、ということですわね。

伝統的にはゼラはエジプト王オソルコン1世のことだと言われている。

オソルコン1世はシシャクの子。

シシャクはかつてレハブアムの時代に、ユダ王国に攻め入った王だったね。

だが他にも色々な主張がなされている。

20世紀のお騒がせ科学者イマヌエル・ヴェリコフスキーはアメンホテプ2世だと主張した。

2018年現在も活躍中の歴史家デイビット・ロールは別の意見だ。

彼はラムセス2世に従う将軍がゼラだと著書で語っている。

(『Revisiting Velikovsky』J. Eric Aitchison著を参照)

よくもまあ、こんな些細な出来事にああでもないこうでもないと。

著者のエズラがてきとうに創作した、とすれば簡単解決でしょうに。

本当に好き勝手書いたものは、そうそう残らないものさ。

陰謀論が好きな人は一人の意図で何でも出来ると考えがちだけどね。

アサ王が神に従ったから戦いにも強かった。

そういう話を盛り込みたかったんかもしれへんな。

せやかて好き勝手言えるもんでもない。

元となる話があるはずやっちゅうのは分からんでもないわ。

イスラエル王バシャがユダ王国に攻め上ってきた。

ユダ王アサは防備を固め、アラム王ベン・ハダドに金銀を贈り同盟を結んだ。

これによってアサはユダ王国を守ったが、予見者ハナニが彼を責めた。

アラム王と同盟など結ぶのではなく、神を頼るべきであった、と。

アサは予見者に立腹し、彼を投獄した。
予見者ってのは預言者とちゃうんか?
預言者は神の言葉を聞き、それを語る者だね。

予見者は洞察力に優れた者という意味だろうと言われている。

実際のところ、同盟によって敵を牽制するのはよくある話だ。

大きな被害を出さずに済む。

おそらく予見者ハナニは強硬派だったんだろう。

イスラエルと一戦交えて打ち負かすべきと考えたんじゃないかな。

組織が一枚岩になることの方が珍しいからな。

どこもかしこも、しがらみだらけやで。

みんな一所懸命に生きとる。

うちはそれを讃えたい。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色