3.ヨルダン川を渡る

文字数 704文字

ヨシュアは祭司たちに命じた。

契約の櫃(ひつ)を担ぎ、民の先に立ち川を渡るよう。

祭司たちがそのようにすると、ヨルダン川の水はせき止められ、壁のように立った。

軍を進めるために、川の水を止めた?

規模は多少劣るけど、モーセの海割りみたいやな。

まさしく。

渡渉のこの場面は、紅海の海割りと同様に重要な奇跡なんだ。

神様はヨシュアに告げた。

十二人の男に命じ、十二個の石を拾わせるように。

そしてその石を、祭司たちのいる川の真ん中に立てた。

なんでそんなことしたん?
記念、と言われているけどね。

合理的な意図があったのか、祭司的な何かがあったのか……。

約4万人の軍隊がエリコの平野に着いた。

神様がヨシュアを大いなるものとした。

それゆえ、彼らはヨシュアを恐れ敬った。

4万人の軍隊か。

けっこう多いな。

ちなみにエリコの人口は2014年の時点で2万2000人とされている。
当時にあってそれほどの人口を擁していたはずもない。

仮にイスラエルの4万人に誇張があるにしても、圧倒的な戦力差だったろうね。

戦いは数やで。
イスラエルの子らはギルガルに宿営し、過越の祭りを祝った。

彼らがその土地の産物を食べた翌日からマナは絶えた。

イスラエルの子らに、もはやマナはなくなった。

彼らはカナンの地の収穫物を食べた。

ようやく虫のうんこともおさらばや。
ヨシュアは抜き身の剣を持った男に会った。

彼は、神様の軍隊の頭として現れた。

ん?

誰やこいつ。

順当に考えればミカちゃんのことじゃないかな。

神の軍勢の頭なんだから。

ほほう。

ついにうちの出番っちゅうわけやな。

特に何をするでもなく。

ヨシュアに「聖なる場所では履物を脱げ」と言うだけなんだけどね。

うちは何がしたかったんやろか。
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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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