1.神に似たるものは誰か

エピソード文字数 1,274文字

モシェレトの人、ミカに臨んだ主の言葉。

それはユダの王ヨタム、アハズ、ヒゼキヤの時代に、

サマリアとエルサレムに関してミカが見た幻である。

親近感わく名前やな。
「ミカ」と聞けば、大天使ミカエルを思い起こすよね。

『ミカ書』のミカは預言者のことだけど、名の意味は通じるところがある。

名の意味?

うーん、ミカエルは確かMî(誰が)khā(~のような)'ēl(神)やから。

「神に似たるものは誰か」っちゅう意味やったな。

一説ではユダ・マカバイも似たような意味を持っていましたわね。

Mi kamokha ba'elim Adonaiで「主よ、神々のうち、だれがあなたに比べられようか」

長ったらしいですが、これを略してMakabi(マカバイ)だとか。

どちらも、神に比するものは無く、唯一無二という意図だね。

『ミカ書』のミカはヘブライ語でミカヤフ(Mikayahu)。

神を「エル」ではなく「ヤハウェ」としているのさ。

名を呼ぶか否かが違ってて、意味としてはミカエルと同じなんだ。

なるほどなあ。

そんで、そのミカは何した人なんや?

端的に言えば、金持ち批判だ。

現代に比べてよほど不正が横行していた時代さ。

ミカは有産階級者たちの金権政治を強く批判した。

ああ、寝床で不正を企み、悪を行う者は、災いである。

夜明けとともに彼らはそれを実行に移す、

自分たちの手でそれが可能だからだ。

彼らは土地が欲しければ強奪し、家屋をも奪い取る。

具体的な方法は書かれていないけれどね。

例えば、借金の形に土地を奪う、なんてことを言ってるんじゃないかな。

後世、金融業で高い利子を取るイメージのイスラエル人だけど、

同族の間では利子を取る行為も禁止されている。

神が怒るほどなら、それを破っていたのかも。

アッシリアやエジプト。

強国に挟まれていても、国がまとまっていれば生き残れたかもしれません。

松浦静山曰く「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」

イスラエルは滅ぶべくして滅んだ、ということでしょう。

腐敗は人から気力を奪うからな。

ミカはそういう社会に怒っとったんやろ。

怒りは不正を行う金持ちだけではなく、いわゆる偽預言者にも及んだ。
主はこう仰せになった。

彼らは、歯で噛むものがあれば、「平和」と叫ぶ。

しかし、彼らの要求するものを与えなければ、争いを仕掛ける。

根拠なく「平和」を唱えたところで「平和」は降ってきませんわよ。

ただご機嫌取りのために甘い言葉をささやく連中……。

それは悪魔の囁きというものでしょう。

愚か者は絶えない。

おかげで僕らは日々を楽しませてもらっている。

その預言者は何か要求しとるらしいけど。

それは、誰に、何を要求しとるんや?

支配者たちに金銭を含めた見返りを要求しているってとこだね。

大衆をコントロールするため、預言者に「平和」を保証させる。

何の意味も無いことだけれど。

そしてまたいつもの展開だね。

イスラエルは破滅したが、その先の希望もある。

いつか来る真の平和を願って。

あなたは、ヤコブに真実を示し、アブラハムに慈しみを注がれます。

その永遠の昔から、あなたが、わたしたちの祖先に誓われたように。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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