4.新約聖書

文字数 1,060文字

『エレミヤ書』第31章31-34節(読みやすくするため部分的に改変)

見よ、わたしがイスラエルの家とユダの家と、新しい契約を結ぶ日が来る。

かつて彼らをエジプトから連れ出した日に結んだ契約のようなものではない。

わたしは彼らの夫であるのに、彼らはそのわたしの契約を破ったのだ。

これは、わたしがイスラエルの家と結ぶ(新しい)契約である。

わたしは彼らの内面に律法を置き、彼らの心にそれを書き記す。

そしてわたしは彼らの神となり、彼らはわたしの民となる。

もはや隣人どうし、兄弟どうし「主を知れ」と説くことはない。

彼らはみな、身分に関わらず私を知っているのだから。

わたしは彼らの悪を赦し、彼らの罪をもはや思い起こさない。

ちょっと長い引用になってしまったね。

エレミヤは南ユダ王国が滅びる前の預言者だった。

「契約を破った」と言っているのは、王たちが偶像崇拝を行っていたことを指す。

バビロン捕囚のちょっと前やな。

厳しい時代やったで。

今も今とて厳しいことには変わらんのやけど。

国が滅びようとし、かつての契約もままならない。

それでも、いえ、それゆえに未来への希望を繋ぐ必要があったのでしょう。

神と新たな契約を結び、今度こそ平穏を手に入れたいという。

ここで語られる「新しい契約」について、ユダヤ教では契約の更新という見方をする。

過去の契約を破棄するわけではなく、追加や強化といった意味合いになるのさ。

しかしキリスト教では、大胆にも過去の契約を破棄すると考える。

そのことが『ヘブライ人への手紙』にはっきりと書いてあるんだ。

『ヘブライ人への手紙』第8章13節

神は、「新しい」という言葉によって、初めの契約を古いものとされたのです。

年を経て古びたものは、やがて消えてしまいます。

「消えて」しまうなどと、随分とはっきり仰いますのね。

これでは、福音よりも前の聖書は不要と主張する者が現れるのも当然ですわ。

そしてそのような発想から、「新約聖書」という呼び名が生まれたのでしょうね。

【旧】い契【約】は「旧約聖書」というわけ。

新約聖書はギリシア語でヘ・カイネ・ディアセーケ(Hē Kainḕ Diathḗkē)

そのまま英語にすれば "the new testament" となります。

ただしこのディアセーケには「契約」の意味が含まれていましてよ。

直訳の「新契約」だと変な響きがあるね。

仮にディアセーケを「聖書」と訳しても、「新聖書」だ。

言葉としては「聖書」だけで契約の意味が含まれている。

それだと通じにくいから「新約」という言葉を作って、「聖書」に載せたんだろう。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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