2.高慢な金持ち

文字数 907文字

お前より力があり金のある人と交わるな。

土鍋と鉄鍋が仲間になれようか。

ぶつかると土鍋は粉々になってしまう。

ここで語られている比喩は、イソップ物語の一つに由来する。

『二つのポット』という物語があるんだ。

ふむ。

その二つのポットは土鍋と鉄鍋のことなんやな?

物語では土製のポットと鉄製のポット、二つが川を流れていく。

土製のポットは鉄製のポットに「近づかないでくれ」と願う。

もしぶつかってしまえば、上の絵のように割れてしまうからね。

鉄製のポットが金持ちで、土製のポットが貧乏人という比喩だね。

財産の大きく異なる者が触れ合えば、貧乏人が傷つくのは世の習いということさ。

金持ちはお前が役に立つ間はお前をこき使うが、

お前が無一文になると、お前を見捨てる。

いつの世にも、このような話は溢れております。

「先進国」などと呼ばれる国においても例外ではございません。

身に覚えは無くとも、身近な話ではありましょうに。
その点、うちのボスは安心や。

こき使いはしよるけど、絶対に見捨てたりせえへん。

従っとる内は、の但し書き付きやけど。
ご馳走をふるまって、お前に恥をかかせ、

二度も三度も、お前から搾り取り、

遂にはお前をあざ笑う。

ご馳走をふるまう?

美味しいものがいただけるのなら、それは良いことなのでは。

解釈は明確ではない。

ただ、この場面は高利貸しのことを言っているのではないかと思われる。

高利貸しか。

つまり、ご馳走をふるまうってのは金を貸すっちゅうんやな。

そんで、二度、三度と利息を取って……。

しまいには、すってんてんや。

狼と羊が、どうして共存できようか。

罪人(つみびと)と敬虔な人との間も、またこれと同じである。

つまり全く相いれない存在だということだ。

「貧しい人は金持ちの牧草」だとも表現する。

金持ちが馬鹿なことを話しても、人はもっともなことだと言う。

身分の低い人が賢いことを話しても、何の注意も払わない。

何を言ったかではなく、誰が言ったかが重要となる。

そういうことはままあることです。

さほどのことを語っているわけでもない。

されど、この方が言うのなら称賛しなければ。

別に悪いことではございません。

時に権威は物事を円滑に進めるための道具となりましょう。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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