8.サマリア

エピソード文字数 1,647文字

「善きサマリア人」って言葉、聞いたことあるかな?
なんか聞いた気がするな。

何の話かはよう知らんけど。

そういう人は多いだろうね。

まずはサマリア人が何者かってところを確認してみよう。

イエスはエルサレムに向かって旅立とうと決心された。

使いの者が準備のためにサマリア人のある村に入った。

しかし、サマリア人は受け入れなかった。

弟子のヤコブとヨハネは、天の火で彼らを焼き払うよう願ってはどうかと提案した。

イエスは振り向いて二人をたしなめられた。

なんでそないに好戦的やねん。
まさに『マルコによる福音書』で「雷の子」と称されるだけはある。
『マルコによる福音書』第3章17節

ゼベタイの子ヤコブとヤコブの兄弟ヨハネにはボアネルゲス、

すなわち、雷の子という名をお与えになった。

こんな風に、サマリア人はユダヤ人と友好的とは言い難い。

しかし彼らは完全な異民族というわけでもないらしい。

上にガリラヤ(GALILEE)の文字が見えますわね。

近くにナザレ(Nazareth)も。

そこから下、死海(Dead Sea)ちかくにエルサレム(Jerusalem)。

その途上にサマリア(Samaria)という町や地方がありましてよ。

この辺りはかつて、北イスラエル王国が栄えた場所。

とするとサマリア人とは……。

そう。

彼らはかつてアッシリア帝国に滅ぼされた北イスラエル王国の住民。

さらに具体的にはマナセ、エフライム族の子孫だと主張している。

ほんなら、同じ神様を拝む者同士の仲間やん。

今は北も南も滅びた後なんやから、また仲良くしたらええのに。

それもそう簡単にはいかない。

長い年月が経てば生活も思考も変わってくる。

サマリア人は似た人々であっても、決して同じではないのさ。

『エズラ記』第4章10節

(バビロン捕囚後、ユダヤ人がエルサレム神殿を建てようとしたことへの告訴)

さらに偉大で、高貴なオスナパルがサマリアの町々に移り住まわせたほかの民とユーフラテスの彼方の地に住まわせた他の民より。

そう言えば北イスラエル王国滅亡後、いくらかの民は連れ去られたのでした。

そして空いた土地に別の民族が入って来た。

残ったイスラエル人と他民族との混血も進んだことでしょう。

そしてその信仰にも差異が生まれる。

『申命記』の記述が一番よく指摘されている。

『申命記』第27章4-5節

(モーセとイスラエルの長老たちによる言葉)

あなたたちがヨルダン川を渡ったなら、今日、

わたしが命じるこれらの石をエバル山に立て、漆喰を塗りなさい。

そこにあなたの神、主のために祭壇を築きなさい。

ここでエバル山と書かれているんだけれど。

サマリア語で書かれたトーラー、いわゆるサマリア五書ではゲリジム山とされている。

なんでやろ。

ほんまはエバルが正しいのに、間違ってもうたんやろか。

実はそうとも言い切れない。

死海文書の研究によると、サマリア五書の方が正確なのではないかと言われている。

次の箇所を読めば、その信ぴょう性も高いと思うんじゃないかな。

『申命記』第27章12-13節

あなたたちがヨルダン川を渡ったなら、民を祝福するために、

シメオン、レビ、ユダ、イサカル、ヨセフ、ベニヤミンはゲリジム山に立ちなさい。

また呪いのために、

ルベン、ガド、アシェル、ゼブルン、ダン、ナフタリはエバル山に立ちなさい。

神の祭壇を立てた山で呪いを行うとは。

これでは、あべこべですわね。

確かに、これはちょっと理解でけへんなあ。

どっかに書き間違いがあるんちゃうかって気ぃするわ。

サマリア人が、祭壇を築くのはゲリジム山や言うのは筋が通っとる。

そして当然ながら、サマリア人は自分たちの信仰こそ正しいと思っている。

微妙な差異であればこそ、その関係は相いれないものともなる。

関係ない人からすれば、細かいことを気にするなと思うかもしれないけどね。

ちなみにサマリア人は現代にも残る民族だ。

2018年の時点で800人以上いるらしい。

(TOUR GUIDE AARON SHAFFIERのブログ記事「What is a Samaritan?」参照)

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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