1.カナン侵入前

エピソード文字数 968文字

久しぶりやな、サタニャエルくん。
おかえりミカちゃん。

どこ行ってたのさ。

うちはまだ死にとうないからな。

ちょいとエデンに隠れさしてもろたんよ。

まあ、いいけど。

話は進んで、ついにモーセが死に、後継者ヨシュアが立ったよ。

モーセの死後、神様はヨシュアに言った。

「お前の命の続くかぎり、誰もお前の前に立ちはだかる者はいない」

「強くあれ。雄雄しくあれ」

「わたしはお前とともにいる」

えらい激励されとるな。
「雄雄しくあれ」はたびたび繰り返される。

これは敵に対して雄雄しくあれ、というのではない。

律法を守ることに対して雄雄しくあれと言っているんだ。

せやけど、律法守ったから言うて、勝てるもんでもないやろ?
普通に考えればそうなんだけどね。

これは聖書さ。

神の言葉に従うことが最も優先される物語なんだよ。

ヨシュアは民の指揮官たちに、食糧の準備を命じた。

そしてモーセの言葉を告げた。

「あなたたちの神様、主は安息を与える。この土地を与えてくださった」

そして戦いの指示を与えた。

「勇士は武装し、先頭に立って川を渡り、兄弟たちを助けよ」

赤い丸印がシティム。

ヨシュアたちはそこにいる。

南に死海があるなあ。

てことは、シティムの西に流れてんのがヨルダン川か。

ヨルダン川東の部族、ルベン族、ガド族、マナセ族の半数。

彼らは先鋒を務めることを誓い、ヨシュアに従った。

彼ら部族は家畜が多いため、ヨルダン川東の土地を求めたんだ。

その代わりに、先鋒として戦うことを求められた。

まあ、先陣切るのは怖いしな。

そん代わり、一番槍は褒賞が多い。

そういうのはいつの時代、どこの場所でも変わらんのやろ。

ところでこのガド族にはちょっと面白いネタ話がある。

日本の天皇を「ミカド」と言うけれど、それは「御ガド」で、ガド族にルーツがあると言うんだ。

はあ?

なんやそれ。

いわゆる「日ユ同祖論」というやつでね。

戦前にもてはやされたやつさ。

ちなみにそれを主張したのは小谷部全一郎(おやべぜんいちろう)。

「ジンギスカンは源義経なり」で有名な人さ。

英雄、源義経が生きとってほしいって気持ちは分かるけどな。
その源義経はアイヌ神話のオキクルミだという話もある。

また、壇ノ浦に沈んだ安徳天皇はヤマタノオロチの化身とも言われる。

神話の世界ってのは、現代人が思う以上に息が長いのさ。
そらそうや。

なんせ、うちがここにおるんやからな。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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