15.共和制ローマとの同盟

エピソード文字数 1,547文字

ユダ・マカバイはシリア軍を退けることに成功した。

それによりつかの間の平和を得ることが出来た。

しかしそれが永遠に続くものでないことは自明だった。

そこで先手を打つことにした。

シリアにとって強大なライバルである共和制ローマと手を組むことだ。

ローマに関する名声はユダ・マカバイの耳にも入っていた。

周辺諸国に比べてエルサレムは弱小やからな。

ぼんやりしとったらすぐ消滅してまう。

味方を求めるんは当たり前やで。

ただ、情報網の発達していない時代のことだからね。

ローマの名声についても、史実と異なる部分がある。

何を今さら。

そんなこと気にしていたら、いつまで経っても前に進めませんことよ。

乱暴やけど一理あるわな。

ともかく先に進めようや。

りょーかい、にゃ。
ローマ人は非常に強大であった。

人々はユダに次のように語った。

ローマ人はガラテヤ人と戦い征服し、貢ぎを納めさせた。

ここで言うガラテア人は、おそらくガリア人のことを指す。

紀元前2世紀頃にローマ人がイタリア北方のガリア人を征服したんだ。

ガリア諸部族は長いことローマを苦しめてきた連中やからな。

そろそろやり返そう思ったんやろ。

ガリアの名はかの有名な『ガリア戦記』でよく知られていることでしょう。

カエサル自らが執筆したそれは、ガリアとの因縁の決着とも言えますわね。

イスパニアの地において金銀の鉱山を支配した。

離れた地方であっても、謀略と忍耐をもって全領域を支配した。

金も銀も好きやで。

キラキラして綺麗やもんな。

お姉さまがお望みであれば、いくらでも差し上げますわ。
ここで言う「金銀の鉱山」がどこのことかよく分からなかった。

もし知っている人がいたら教えてほしい。

世界遺産に登録されているラス・メドゥラスという金鉱山がある。

この鉱山は紀元前25年に共和制ローマに征服され、ローマ帝国の重要な資金源となる。

鉱山の存在自体はもっと前から知られていたから、ここのことかもしれないね。

地の果てから攻撃してきた王たちを屈服させ、粉砕した。

そのほかの王たちには毎年貢ぎを課した。

「地の果て」というのは、要するにイスパニアのことだ。

そこの原住民族たちを打ち破ったということだと考えられるらしい。

確かに、イベリア半島の先は広い大西洋やからな。

まだアメリカ大陸を知らんのやから、「地の果て」ではある。

キティムの王フィリポスとペルセウスと戦って征服した。
ここで語られるのは、第二次と第三次マケドニア戦争のことだ。

共和制ローマが勝利し、アンティゴノス朝マケドニアは滅びることになった。


彼らに戦いを挑んだアジアの王アンティオコス大王を粉砕した。
このあたり、ユダヤ人にも大いに影響のある話ですわね。
セレウコス朝シリアはこの敗戦で莫大な賠償金を払うはめになった。

そしてその財源としてエルサレムに目をつけた。

ある意味でローマのせいでユダヤ人が苦しんだとも言える。

そのローマに助けを求めるのですから。

なんとも愉快だこと。

彼らは自分たちのために元老院を設立した。

320名の元老院議員が日ごとに民衆の問題を討議していた。

年ごとに一人の人物を信任し、彼に統治を委ねた。

彼らの間には恨みも嫉妬もなかった。

まず、「日ごと」に討議していたというのは事実と異なる。

実際には月ごとに3回程度で、たまに臨時で開いたらしい。

毎日討議してても、あんまし有益やなさそうやしな。
恨みも嫉妬も無いだなんて眉唾ですわ。

草どもは恨んだり妬んだりしてこそでしょうに。

少々の美化、もしくは理想化が見られるね。

これから同盟を組もうと言うのだから、期待値上げちゃったのかな。

ユダは使節をローマに送って、同盟を結ぶことに成功した。

同盟国に戦いが起こればこれを助けるという内容だ。

ここから先、ユダヤ人はより大きな時代の潮流に巻き込まれていくことになる。
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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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