9.千年王国

エピソード文字数 1,357文字

倒れた、倒れた、大バビロンが。

そして、悪霊どもの棲処、あらゆる汚れた霊の巣窟、あらゆる汚れた忌むべき鳥の巣窟となった。

大淫婦バビロンが倒れましてよ。

彼女がローマなりエルサレムなりとすれば、国の崩壊を示唆いたしておりましょう。

『黙示録』は彼女が「驕り高ぶり」「贅沢」な暮らしをしていたと語る。

聖書では驕り高ぶった態度が身の破滅につながると語っていたね。

『箴言』第16章18節

うぬぼれは破滅に先立ち、高慢心は没落に先立つ。

まさに箴言やな。

驕りのゆえに国を滅ぼしたり、滅ぼしかけた例は世界中にある。

へりくだっててもあかんけど、驕り高ぶるんが一等悪い。

バランス感覚が大事やで。

『ヨハネの黙示録』第18章9節

また、この女と姦淫を行い、贅沢をほしいままにした地上の王たちは、

彼女が焼かれる煙を見て、そのために泣いて、胸を打ちたたく。

『ヨハネの黙示録』第18章20節

天よ、この都のことで喜べ。

聖なる人々、使徒たち、預言者たちよ、喜べ。

神は、あなた方の訴えを聞き入れて、この都を裁かれたからである。

国の滅びを「喜べ」と言う。

これは危険思想で間違いありませんわね。

こんな結末じゃあ、そこに至る「愛」でさえ脅迫に思えるね。
大バビロンが滅び、ここにメシアの勝利が宣言される。

子羊であるイエス・キリストと、その花嫁たる教会の婚姻が祝福される。

ハレルヤ、万物の支配者であり、わたしたちの神である主は王となられた。

わたしたちは喜び、楽しみ、神に栄光をささげよう。

子羊の婚姻の時が来て、花嫁は用意を整えた。

花嫁はその装いのために、光輝く清い亜麻布の衣を与えられた。

残念ですわね。

これで、獣も竜もおしまいなのかしら。

いやいや、もうひと踏ん張りだよ。

メシアが勝利しても、獣たちはまだ抵抗を続けるんだ。

獣と地上の王たちの軍勢が神の軍勢に立ち向かうのさ。

なんぼでも相手したるで。
しかし、獣は捕らえられた。

獣の刻印を受けた人々、獣の像を礼拝した人々を惑わした偽預言者たち。

どちらも硫黄の燃える火の池に生きながら投げ込まれた。

残りの者どもは、馬にまたがっている方の口から出た剣によって殺された。

すべての鳥がその肉を飽きるほど食べた。

なんとおぞましい光景かしら。

やはり神のすることは残酷極まりますわね。

口から剣出して殺すって……、えらいトリッキーな戦い方するなあ。
口から出る剣は力ある神の言葉を示すものだ。

その比喩表現が『ヘブライ人への手紙』にも記されている。

『ヘブライ人への手紙』第4章12節

実に、神の言葉は生きていて、力があり、どんな両刃の剣よりも鋭く、

魂と霊の、また、関節と骨髄の分かれ目まで刺し通し、

心の思いや考えを見分けることができます。

獣たちの軍勢は倒れた。

そしてさらに、竜であるサタンは封印されることになる。

み使いは、悪魔でありサタンでもある、あの太古の蛇である竜を捕らえて、

一千年の間つないでおき、底知れぬ淵に投げ入れて鍵をかけ、その上に封印をした。

すまんなあサタニャエルくん。

千年ゆっくり休んどいてや。

仕方ないね。

千年後に暴れるとしよう。

また、わたしは、イエスの証しと神の言葉のために、首を刎ねられた者たちの魂と、

獣とその像を拝むことを拒み、その額や手に刻印を受けなかった人々を見た。

彼らは生き返り、キリストとともに、一千年の間、統治した。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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