12.チャリティ

文字数 1,234文字

チャリティとは元々、「Christian love of one's fellows」

つまり「仲間たちとのキリスト教徒の愛」という意味から来ております。

現代では広く、一般的な慈善活動をチャリティと称しますわね。

(Oxford Dictionary of English参照)

全然意識せんところで、キリスト教の精神が入ってたりすんねんな。
チャリティに近い精神は古くからある。

ユダヤ教においてそれはツェダカ(Tzedakah)と呼ばれる。

翻訳するとチャリティになるけれど、その意味合いは若干異なっているね。

ツェダカは「正当」と「正義」に基づく寄進であって、その相手は弱者とは限らない。

もちろん貧者に寄付をすることもツェダカには含まれている。

だから広い意味でチャリティと同じようなものと理解して良いと思う。

イスラムにおける喜捨・ザカート(Zakat)などは貧者への寄付ですわね。

信仰告白・シャハーダ(Shahada)、礼拝・サラー(Salah)

断食・サウム(Saum)、巡礼・ハッジ(Hajj)に並ぶイスラム五行の一つでしてよ。

弱者を救済してこその宗教やからな。

色んなとこで似たようなことしとるんやろ。

そこでまたイエスのたとえ話を見てみよう。

彼は「愚かな金持ち」として、財産をため込む者を非難した。

しかし神はその人(財産を蓄えた金持ち)に仰せになった、

「愚か者、今夜、お前の命は取り上げられる。

そうすれば、お前が蓄えた物は、いったい誰のものになるのか」。

自分のために宝を蓄えても、神の前に豊かにならない者は、このようになる。

蓄えるだけ蓄えて死んでもうたんか。

これから人生楽しもうって時やったのに、残念やなあ。

金を貯めること、それ自体が一種の喜びなのでしょう。

それはそれで結構なことかもしれません。

いずれにせよ、死後の世界に金は持っていけない。

「地獄の沙汰も金次第」「阿弥陀の光も銭次第」と日本では言うけどね。

あなた方の持ち物を売って、施しなさい。

自分のために、古びることのない財布を作り、尽きることのない宝を天に蓄えなさい。

この世の財をため込んだところで神の国には持っていけない。

けれど善行によって天に宝を積むことが出来る。

イエスはそう言った。

とは言え、イエスの周囲は貧乏人だらけでしてよ。

懐にため込めない連中が、どのようにして天に宝など積めますでしょうか。

貧乏人は貧乏人なりに頑張ればいいのさ。

金額の多寡ではないことは別のところでイエスが語っている。

そしてこの教えは「自発的な信心の団体」設立へと繋がっていく。

中世ヨーロッパではコンフラタニティと呼ばれる組織が増え始めた。

コンフラタニティ?
都市の発展により人々の生活が安定してきた。

そして貧しい人たちに目を向ける余裕が出て来たからかな。

フラタニティはラテン語で「兄弟」を意味する。

だから日本語では「兄弟団」とか「兄弟会」みたいに言われているね。

なるほど。

小学校の仲良し会みたいなもんやな。

ええ、広い意味では、おそらく……。
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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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